ゲームを学びにできるか──eスポーツに英会話、「ゲームの習い事」に夢中の子どもたち
顔の見えないリモート環境での心がけ
生徒にとって快適なレッスン環境を作るため、指導者側はどのように取り組んでいるのか。京さんたちを指導するAkiコーチはこう語る。
「(ゲームをしているレッスン中は)お互いの顔が見えない分、生徒が今どういう気持ちでいるかを常に先回りして把握するように努めています。英語をしゃべっていないのはシャイなのか緊張しているのか、単語の意味がわからないのかとか」 その日学校で悪いことが起きたとか、直前まで親に怒られていた、といったケースもあるという。 「そういったことまで話してくれるようになると、自然とレッスンにも協力してくれるようになるんです」 ゲーム内では、限りあるアイテムの争奪戦になることもある。夢中になるあまり、本来仲間に分け与えるべき武器を独占するなど、未熟な自己中心的プレーをする生徒もいる。 「それだとチームワークにならないから勝てないよと伝えます。(集団型のゲームでは)チームワークが重要で、そのために英語でコミュニケーションをとっているんだと。子どもたちは最初は勝ちにこだわりがちですが、そう伝えると話を聞いてくれますね。私が後ろの敵に気づいていなかったときに『Enemy is behind you! 』と言われて勝てたことがあって、その子もおっしゃー! って喜んでいました」
未成熟な精神、大人が対処の仕方を
ゲームが学びにつながる側面があるとはいえ、「やりすぎ」に悩む親たちも多いだろう。アスマーク社が全国の既婚男女(20~50代)を対象に実施した「ゲームと子供に関するアンケート調査」(2019年)によると、ゲームが子どもの発育・教育に与える影響について、良いと答えた割合24.2%に対し、悪いと回答した割合は27.3%と懸念を示す声が優勢だった。実情についてネット・ゲーム依存専門の予防、回復支援などを行う臨床心理士の森山沙耶氏に聞いた。
「海外の研究によると、プロゲーマーを対象にした調査で多かったのが、眼精疲労と手と手首へのストレスを訴える声でした。1日に5~7時間も画面に集中して競技を行うプロの職業病ともいえます。子どもは十分にからだが成長しきっていないので、ゲームが長時間になりすぎないよう、大人以上に注意が必要です」 「心への影響はうつや依存症、攻撃的な言動が主なものとしてあげられています。ただし、ゲームの習い事をしたからといって、ただちにそうなるものではありません。むしろ目的をもったプレーや、ゲームの中でスキルを高める学びをすることが依存症の予防になる場合があるかもしれません」 日常生活で今までできていた活動ができなくなることや、ゲーム以外に対する興味関心が極端に低下することが、ゲーム依存症の一つのサインだという。 「その場合はインターネット依存・ゲーム障害治療施設やお近くの医療機関、相談機関、民間のカウンセリングルームなどにご相談ください。気後れする場合は地域にある子育て支援センターでも結構です」