97歳、松崎淳子さんの土佐料理レシピ「茶殻も捨てずに食べ尽くす。昭和・平成・令和の食卓を見て気づいたこと」
地域の伝統的な食文化が、食の欧米化や生活様式の多様化により失われつつあります。自然豊かな高知県で生まれ育ち、土佐の伝統食の研究を続ける松崎淳子さん(崎は正しくはたつさき)に、郷土料理の魅力を教えてもらいました(構成=野田敦子 撮影=釣井泰輔 イラスト=あなんよーこ) 【写真】住所録の余白を活用したお手製レシピノート * * * * * * * ◆料理をするのは、1日に1回 私は、毎日必ず朝昼晩と3食きちんといただきます。体が要求するから、自然とそうなるの。加工食品は食べず、ほとんど手作り。歳とともに食事の支度が億劫になるというけれど、私はちっとも苦になりません。 といっても料理をするのは、1日に1回だけ。夕食のおかずを4、5人分と多めに作って、2人分は娘とその日に食べ、残りは冷蔵庫に入れておく。それが翌日の娘のお弁当や私の朝ご飯、昼ご飯のおかずになるというわけ。電子レンジでさっと温めて並べたら、あっという間に品数豊富な食卓になります。 よく作るのは、「大根、にんじん、ごぼうとこんにゃくの炊き合わせ」「りゅうきゅうの酢の物」「魚の切り身のパン粉揚げ」「鶏レバーとにんにく芋の炒め煮」など。 パッと見て緑黄色野菜が足りないなと思ったら、常備している大根葉のお手製ふりかけを出してきたり、たんぱく質が不足していたら、おじゃこをパラパラとかけたり、卵かけご飯にしたり……。 特別なことは何もしていないけれど、長年学生に教えてきたせいか、無意識に栄養バランスを考えているみたい。こんな食生活を続けているので、病院で調べても検査の数値はすべて正常。足が痛い以外、「どこっちゃァ悪うない」といつも自慢しています。
◆茶殻も捨てずに食べ尽くす 子どもが小さいころ、大学から帰って急いで夕飯の支度をしていると、幼い娘が台所にやってきては、「お腹がすいた!」とまとわりついてきました。お菓子を渡せば手っ取り早いけれど、そこはこらえて、代わりにさっと握ったおむすびを「はい、どうぞ」。 お菓子は糖分がすぐ血糖になって空腹感が消えてしまいます。でも、でんぷん質の米は消化吸収に時間がかかるから、血糖になるのもゆっくり。満腹を感じないぶん、おかずをたっぷり食べられるのです。 おむすびは、非常食としても重宝します。まとめて作っておけば、好きなときにパッと手に取って漬物と一緒にちょいとつまめるでしょう。残ってもきれいなままだし、洗い物も少ない。こうして考えると、おむすびは日々の暮らしになじんだ伝統食。これからも大事にしていきたいものです。 非常時といえば、お茶も忘れてはいけません。私は、災害が起きると必ず煎茶の葉をカバンに入れて被災地を訪ねることにしていました。現地には新鮮な野菜がないし、すぐに届く当てもない。 煎茶の葉は、食物繊維やカロテンを豊富に含む緑黄色野菜です。茶殻を油炒めにすればおかずになるし、ご飯にカチリジャコ(ちりめんじゃこ)と一緒に混ぜれば菜飯になる。混ぜるだけなら、火も使いません。
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