「母の様子がおかしいんです…」急死した〈80歳父〉の遺産9,000万円を相続することになった家族。骨肉の相続争いを寸前で回避できた〈45歳長女〉のファインプレーとは?【相続の専門家が解説】
自宅マンションを相続する母親が代償金を払わなくてはいけない?
現状で考えると70代の母親は当分の間は、自宅マンションで一人暮らしをするといいます。景子さんも兄も自分の家は購入していますので、自宅マンションで母親と同居する見込みはありません。 現実的な分け方とすれば自宅マンションは母親が相続し、さらに預金と株式は母親と兄、景子さんが分け合うとなります。兄も景子さんもそれでよいと思っているので、遺産分割はスムーズに決まるはずでした。 ところが、税理士から「自宅を相続する人が他の相続人に対し、代償金を払わなければならない」とアドバイスをされていた母親が感情的になることが出てきたといいます。景子さんが「母の様子がおかしいんです」とポロッとこぼしたのが印象的でした。
代償金は相続財産の中からでも払える
母親は、自分が自宅マンションを相続すると、2人の子どもたちに代償金を払い続けなければならないと理解しているといいます。しかし「そんなに払えるお金はない」というのが母親の本音なのです。 亡くなった父親の財産は次の通りです。相続評価3,000万円の自宅マンション、金融資産(預金2,000万円)、配当がある上場株4,000万円。不動産よりも金融資産のほうが多いのです。いずれにしても母親が自分のお金で代償金を払う必要がないのは明白です。それでも母親が「代償金」を払うことになるのは、「全財産を配偶者が相続する」として、いったん、すべての財産を相続する場合では、母親が子どもたちに「代償金を払う」という形を取るからです。 しかし、相続した財産の中に預金や株式などの金融資産があるので、自分のお金を出すことはなく、代償金が払える状況が見えています。 このような「代償金」についての説明をすると、ようやく母親も理解ができたようです。税理士の説明不足だったのか、母親の解釈が違ったのか、わかりませんが、「代償金」の決め方がネックになっていた遺産分割は進められることになり、母親の顔もパッと明るくなりました。私としては「よくぞ3人で相談に来てくれた」と景子さんに拍手を送りたくなりました。