はやぶさ2の現状 JAXAが会見 (全文1)イオンエンジン出せる最高能力発揮
はやぶさからのイオンエンジン運用性の進歩について
続きまして、イオンエンジンを運用する運用性に関してどれぐらいの進歩というか、はやぶさを経験した私たちがどのぐらい運用改善したかということについてご紹介させていただきます。ここではイオンエンジンの計画外停止と、ちょっとどきっとする言葉を書いていますが、これは通常の運用の範囲内で起こりうるもので、自動安全化処置のことであります。その頻度は、はやぶさのときに比べて大幅に減っております。極めて安定に稼働したということを数字を挙げてご説明申し上げます。 はやぶさの当時は、往復で2万5590時間運転をして、それが当時の世界記録だったと申し上げました。その間、本当にハードウエアのトラブルも数回この中にカウントされますが、68回安全化処置のために自動的に止まるということをしています。これは当初は極めて慎重に、人間が監視している時間帯に見たことのない温度になったらまずは止めましょうというようなことで、宇宙のものというのは基本的には修理することができないというのもあって、大事に大事に使っていくという考え方で、さまざまなデータをすごく狭い範囲で監視をかけて、いったん止めて人が確認しようと考え方で運転をしてきたことの証でもありますけれども。そういうことで平均すると376時間に1回は止まっていて、それを地上から追跡する際に発見したら、再度立ち投げ直すという手間が発生したのがはやぶさでした。 はやぶさ2ではこれらが劇的に改善しておりまして、まだ6515時間の運転と申し上げましたけれども、4回ほどで済んでいます。多くは初期のころに、調整のまだ終わってないころに起きていますが、あとはイオンエンジンにつきものなんですが、放電圧でイオンを加速する電極が時折、突発的に絶縁破壊とか放電という現象を起こします。これはもう、イオンエンジンには避けて通れない現象なんですが、そういったことで設定値を超えて止まると。で、すぐ次の追跡のときに発見して、立ち上げ直して時間ロスは最小限には抑えてはいますが、そういったことが4回ほど起きています。ですが、とにかく初号機に比べますときわめて安定していると。これはチーム内のほかのメンバーからの言ってもらっているぐらい、ちょっと自画自賛ですいませんけれども、はやぶさに比べれば4倍以上安定感があると言って良いかと思います。 で、そういった設定の工夫というか、その辺りの経験値が増えているという中で、運用の効率化ということもやってきております。で、地上からの追跡時間について、はやぶさの当時よりも35%ほど削減して運用をできています。運用もただ見えているから見続けるということをやると、その間にも経費は掛かるということもありますので、確実に小惑星を目指して到着させるということを実現しつつ、効率化をしないといけないということも、この手の新宇宙探査機には取り組むべき課題として私たち認識しておりまして。 で、この地上からの追跡時間の動力航行時間に対する比率をあらためて集計してみましたところ、はやぶさではこの2万5590時間のうち5059時間は地上からの電波が探査機を捉えた状態で見守っているということになります。で、これは運転時間のうち2割ほどに相当します。はやぶさ2ではうまく設定をして勝手に自動停止するということを頻度を減らしたということも手伝って、はやぶさ2の場合はこれまでに追跡時間の割合としては6510分の850ということで、13%ほどです。 これは実際どうやってこういう削減率にしているかを運用のイメージをお伝えしますと、はやぶさのころというのは基本的には毎日7~8時間の追跡ですね。基本的に新宇宙探査機は地球の自転に伴って1日1回、7~8時間見えるということで1つの地上局からは7~8時間連続して追跡することが可能です。で、それをもうそういうチャンスがある限りは追い続けていたのがはやぶさで、毎週6日間を7~8時間かけて追跡するということをやっていたのに対し、はやぶさ2では、かなりめりはりを付けて週に1回は8時間近い運用をして、1週間分の計画を登録するということをやりますけれども、それ以外の週6日か5日運用する、その残りの4~5日に関しては見えている時間の半分に短縮して、1日4時間の、私たち【ハンパス 00:19:41】という言い方をしていましたが、そういった運用をたくさん入れ込んでですね。ただし、毎日自動的にイオンエンジンが止まってたときに追跡の日数の頻度を下げてしまうとわれわれが気付かない間に止まりっぱなしになるというリスクがあります。 計画通りに推力を出さないと、時期によっては次の週以降で取り戻せることもあるんですが、特にこのリュウグウ到着寸前のこの第3期などは1時間止まったらそれを取り返すのに10倍以上時間が、つけが回ってくるというようなこともあって、気付かずに止まったままというのはぜひとも避けなければいけなかったということもありまして、週当たりの日数は減らさずにやっております。で、そういうことをやった結果、週5日か6日で、1日はフルの8時間、それ以外を4時間というふうにやった結果が追跡時間の削減につながったということになります。このように初号機に比べればきわめて順調にここまでの運用はできております。では次のページ。