はやぶさ2の現状 JAXAが会見 (全文1)イオンエンジン出せる最高能力発揮
イオンエンジン運転について
西山:西山がイオンエンジン運用のスライド、7ページ目についてご説明いたします。今年の1月10日から運転を開始しておりまして、すみません、ポインターは。あ、そこを指せばいい。失礼しました。 今年の1月10日から第3期のイオンエンジン運転を開始しておりましたが、それが先日6月3日の、日本時間で14時59分に運転を完了したということです。で、左下のグラフですけれども、これは横軸が日付というか、年ですね。で、縦軸が合成推力の時間平均値と書いてありますけれども、これイオンエンジンは4台搭載しておりまして、そのうち最大で3台までを同時に運転することができるシステムです。1台1台の推力を加減することももちろんできますし、何台動かすかというところも、1台から3台までが選択可能でありまして、その関係でイオンエンジンとして合わせた推力が幾らかというのを、その履歴をお示ししたグラフになっております。 で、今日のご報告は、この第3期が終わったということですけれども、今年の1月10日の時点では、2台運転から開始をしております。なぜ2台かというところなんですが、これはこの時点で探査機が、太陽からの距離が1.28天文単位ということで、地球と太陽の距離を1としたときに、その1.28倍の距離にいると。比較的太陽から離れたところから運転を開始したということがありまして、探査機の太陽電池で発電できる発電量が、イオンエンジン3台分の電力を賄うには足りない時期であったということから、2台での、各スラスターについては最大推力を出してるんですが、2台運転から開始をしております。 で、それがしばらく続きまして、2月の後半から徐々に探査機は太陽に向かって近づきつつあるということで、あるところからはこの3台運転が可能な距離にまで、太陽に近づいたということで、途中から3台運転を開始しております。で、ここですね。一気に推力ががくんと上がってるところが3台運転開始のポイントになります。2月20日ごろだったと思いますが。ただ、この時点ではまだ3台フルパワーはできないというところで、このイオンエンジンの消費電力なり推力が連続的に可変であるという能力を利用しまして、この時点では控えめな推力から始めたということです。その後、じりじりと右肩上がりになっていってる様子が分かると思いますが、これは太陽に接近するのに合わせて、そのときどきに得られる電力をなるべく有効に使い切るという方針で、徐々に各スラスターの推力を高めていったという運用の結果が見て取れます。 最後の3~4週間については、もう完全に現段階でのイオンエンジンが出せる最高能力を発揮して、各スラスター、3台とも10ミリニュートンという、このはやぶさ2で改良して、最大推力をはやぶさ初号機に比べて増強しているものですが、それがこの時点においても最大性能が発揮できているというのが見ていただけるかと思います。10ミリニュートンを3台分ということで、やや傾いた取り付け方をした3台を束ねている関係で、ベクトルの和としての、合成ベクトルとしては30ミリニュートンに若干届かないような数字になっていますけれども、もうフルパワーの運転を続けて、この第3期の運転を完了したというご報告になります。 これで打ち上げ以降の往路のイオンエンジン【運転 00:09:42】を全て終了ということになりまして、ここまでに24キログラムの推進剤のキセノンを消費しておりまして、まだまだたくさん余っていますが42キログラム残っているということであります。で、ここまでの探査機を増速した量としては1015メートル毎秒ということになります。