「お前なんて落ちるに決まってる」中学受験「塾友」の心ない攻撃に親ができること
大手進学塾サピックスが文部科学省の「学校基本調査」と森下教育研究所のデータから、2023年度の首都圏の中学校受験者数は4万3000人と発表した。中学受験という試験に「挑む」ことは素晴らしいことだが、それぞれの家庭や子どもが違うように「中学受験をしないとならない」ということでは決してない。大切なのは、「子どもがどうしたら幸せになるか」「子どもがどうしたいか」だろう。 【マンガ】受験生以外にも響く!中学受験を舞台とした『二月の勝者』12の名言 「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」 こう語るのは、森将人さん。慶應義塾大学を卒業した元大手証券ディーラーだ。 森さんが自身の息子の中学受験の体験を率直につづる連載「勉強嫌いの中学受験」。森さんがサッカーが好きな息子にも、自身の出身校である慶応に進ませたいと中学受験を決断したのは小学4年生のときだった。小学校1年生のときから公文に通っていた流れで小4のときサッカーをすることのできる大手の塾に入ったのだ。小4から塾漬けに疑問を抱きやめさせながらも、「中学受験のない生活」に不安を抱き、転塾。中学受験をしない選択肢はもはやなかった。 では「親のエゴ」と受け止めながらどのようにコミュニケーションを取り、「やってよかった」と子どもが言える最後を迎えたのか。連載5回前編では、小学6年生の1月、いよいよ受験の本番が近くなった時の息子とのコミュニケーションや「塾友」とのトラブルを率直に伝えてもらう。
「6年生の1月」がやってきた
中学受験をはじめて気づいたのは、ハード面での変化に乏しいことだ。教科書は紙の冊子で、ノートにシャープペンや鉛筆でメモをとる。授業でZOOMやユーチューブを使うこともあるが、基本的には対面授業での指導が尊重される。 テストも同じで、受験生が戦う武器は筆記用具、定規、コンパスという昔ながらの文房具だ。シャープペンも使えるが、鉛筆の優位性は変わらない。本番では、シャープペンをカチカチやっている時間ももったいないからだろう。10本ほどを輪ゴムでまとめておく。 定規とコンパスは使っていい学校であれば、出して机のうえにおいておく。ティッシュも袋から出しておくのは必須だ。時間を測るのは、もちろん携帯電話ではなく何の機能もない腕時計。はじめての入試前日の夜は、これらの武器を何度も確認してリュックに入れた。 6年生も1月に入り、埼玉県の入試がはじまっていた。孝多(仮名)の第一志望は、2月1日の慶応普通部。第二志望は1月25日の立教新座で、試験慣れも兼ねた前受け校の受験が1月8日の佐久長聖だった。 受験生のなかでおおよその順位が通知されるので、関東には模試のような感覚で受ける人もいる。東京の試験会場は慶応の校舎を使うので、慶応志望者にとっては下準備になる。何より大事なのは、合格した結果を勝ち取って自分に自信を持つことだ。 布団に入ったのは10時前だ。妻が仕事で泊りなので、妹の青葉も早く寝ることにした。