「生まれてくる子は、絶対にかわいい!」 わが子の障害を知った夫婦が、次の一歩を踏み出すまで
突きつけられた事実に「ごめんな」しか出てこない
望さんが東京パラリンピックの強化選手に選ばれて練習に励む2019年の半ば、ももこさんの妊娠がわかった。その年の12月、子どもの性別を調べるために訪れた病院で、2人はある事実と向き合うことになる。医師が、望さんに「お父さん、何か障害がありますか?」と話しかけたのだ。 望「『えっ、何で!?』と思ったんですけど、『僕、足と手に障害があります』と答えたら、先生が『あー』って。『足、あるね。あ、手もあるね、障害。(指が)3本か4本かな』……。それを聞いて、なんかこう、ふわふわしているような状態になって。そこで『あ、ほんまに俺の子やな』というのを認識したというか」 胎児には、望さんと同じように両手と両足に障害があった。病院からの帰り道。車を運転する望さんが隣に座るももこさんに視線を送ったとき、ももこさんは一粒、涙をこぼした。泣いてしまうと望さんが傷つき、自分を責めてしまうのではないか。そう考えて必死に涙を我慢していたが、止められなかったのだ。それを見た瞬間に、望さんは号泣する。「ごめん。ごめんな……」。2人とも、涙が止まらなかった。 2人はそれぞれ実家に戻り、状況を説明した。 ももこ「みんなびっくりしていたけれど、『大丈夫』と言ってくれて。彼との子どもは絶対ほしいと強く思っていたので、障害があっても絶対にかわいいと思える自信はありました」 自宅で両親に状況を説明した望さんは、その帰り道で、ももこさんの姉と出会う。子どもの障害について報告を受けていたお姉さんは、望さんに『聞いたで。でも大丈夫や。のんちゃん(望さん)前向きやし、きっと大丈夫やで』と語りかける。優しい言葉をかけられて、望さんは、親としての覚悟を決めた。「僕も自分のことをスーパーマンだと思って前向きに生きてきたように、娘も前向きに生きてくれる、スーパーウーマンにしたらええやろ」 この日を最後に、望さんが涙を流すことはなかった。