認知バイアスとは? 他人からの意見を「否定」と捉えてしまう脳の特性
私たちの人生に大きな影響を与える「認知バイアス」。自分が持っている認知バイアスを把握して脳を味方につけ、よりよく生きるためのヒントを探ってみました。 ※本稿は、『PHPスペシャル』2024年3月号より内容を抜粋・編集したものです。
人生を左右する認知バイアス
「認知バイアス」とは、脳が物事をとらえるときに起きる「認知のズレ」のこと。私たちは、見たものや出来事を、実像のままとらえているわけではないのです。 たとえば、「上司の鼻毛が気になって、話の内容が入ってこない!」といった経験はありませんか? こんなふうに、特定の物事だけに注意が集中してしまうのは、「注目バイアス」によるものです。 ほかにも認知バイアスには、さまざまなものがあります。その数は、現在知られているだけでも200種類以上。どのバイアスの影響を受けやすいかは、人によって違います。その違いによって、物事の感じ方や日々の行動、ひいては人生までもが変わってくるのです。 代表的な例で説明しましょう。コップに半分、水が入っているとき、「悲観主義バイアス」の強い人は「半分しかない」とがっかりし、「楽観主義バイアス」の強い人は「半分もある」と喜びます。明らかに、楽観主義バイアスを持って生きたほうが幸せそうですよね。 このようなことの積み重ねで、人生全体が変わってくるというイメージです。どの認知バイアスを持ちやすいかは、遺伝でおよそ4~5割、環境でおよそ5~6割が決まると言われています。 つまり、認知バイアスは、環境や習慣次第で変わる余地があるということです。みなさんも、自分が知らず知らずのうちに持っている認知バイアスに気づき、よりよい人生を送るためのヒントにしてみませんか?
同じ出来事でも、見る人によって変わる!
まったく同じ経験をしても、AさんとBさんでは感じ方が違っています。「出来事」を読み、自分が同じことを経験したらどう思うか、考えてみましょう。 【出来事】 会議の席で、いつもは緊張して発言できないが、勇気を振り絞って、かねてから温めてきた意見を提案してみた。ところが周囲からの反対意見が多く、一瞬で却下されてしまった。 Aさん ・こんなことなら、発言しなきゃよかった ・次も失敗するんだろうな ・私は嫌われているのかも...... ・みんな意地悪だ! Bさん ・私の意見には、改善の余地がある! ・次はこうしよう ・アドバイスをもらえて、ありがたい ・次は違う上司に話してみるのもいいかも あなたはどう感じましたか? Aさんの脳は、ネガティブな認知バイアスでいっぱいです。必要以上に後悔したり、不安を抱いたりする「悲観主義バイアス」をはじめ、次も必ず失敗すると思い込む「確証バイアス」や、他人が悪いと決めつける「自己中心性バイアス」などが働いています。 一方のBさんは、この出来事を「改善のヒントをもらった」ととらえています。Bさんのように、人からの意見を楽観的に受け止められると、幸福感や成功の確率が高まると言われています。みなさんはAさんとBさん、どちらでしたか? 次は、具体的な認知バイアス対処法をお伝えします。