「裸になれば受け入れてもらえる」“20代のすべて”を風俗業に捧げたシングルマザーが、過去を隠さず“天職”に出会うまで
風俗で働いていた経験をもち、現在は色街写真家として作品展を開催したりYoutubeで発信したりしている紅子さん(52歳)。イベントに登場するとチケットはすぐ完売、女性たちからの支持が高い。 彼女はキャリーバッグを引いて、ふわりと待ち合わせ場所にやってきた。トレードマークのベレー帽をかぶった姿はまるで美大生のよう。波乱に満ちた人生を送ってきたとは思えないほど、おっとりした口調も印象的である。 ⇒【写真】風俗で働いていた経験をもち、現在は色街写真家として活動する紅子さん
友だちの作り方がわからなかった
紅子さんは埼玉県で、お菓子などを売っている商店の長女(双子の妹がいる)として生まれた。両親は仕事が忙しく、朝から晩まで家にいない。記憶にあるのは、夕方、父親が買ってくるコロッケをおかずにごはんを食べたこと。テーブルはダンボールだった。 「私は人と話すのが苦手で、保育園に預けられたものの、どうしたら人としゃべれるんだろうと思っていました。先生に『あなたは何もできないから外にいなさい』と放り出されたこともあります。だから小学校に行くのが怖かった」(紅子さん、コメント部以下同) 当然、小学校にもなじめなかった。学校へ行きたくなくて、物置の上に乗って「近づくな」と叫んだり物を投げたりしていた。親も手を焼いてはいたようだが、「毎日、朝早くから11時頃まで仕事でいなかった」から、綿密なケアはできなかったようだ。 「学校では一言も言葉を発しないから、同級生から手の甲を鉛筆で刺されたり、トイレに連れ込まれてデッキブラシで殴られたりといじめられました。何か言わせようとしていたんでしょうね。本当は同級生が集まっている場所に入っていきたい、友だちを作りたいとは思っていたんですよ。だけどどうしたらいいのかがわからなかった」
メーテルが山賊に襲われるシーンを妄想
小中学校を通して、学校には行ったり行かなかったりだった。もはや勉強もすっかりわからなくなっているため、授業中も彼女はひたすら妄想で物語を紡いでいた。 「小学生のころから頭の中に絵を描きつつ、妄想を繰り広げていました。たまたまどこかで女性の裸体が載っている雑誌を見つけて、きれいな女性は人に受け入れられるんだとわかった。妄想の中では、銀河鉄道999のメーテルのような美しい女性が山賊に襲われて身ぐるみ剥がされて、というところにエロスを覚え、そういう絵も描いたりしていましたね」 中学生になったらきっと男に襲ってもらえると思っていたが、実際には男子からハスキーな声をからかわれたり、気持ちが悪いと避けられたりした。どうしたら人に受け入れてもらえるんだろう。それが彼女の心をいつも支配していた。「どうしたら好かれるのだろう」ではなく、「受け入れられるのだろう」というのはとてもせつない承認欲求である。 「名前だけ書ければ入れるような高校に、ようやく入れたけど結局、1学期くらいで辞めてしまったんです。さすがに母が泣いていましたね。そのまま家にいるわけにもいかないので、面接と作文だけで入れる美術の専門学校に行こうと決め、朝から晩までアルバイトをしてお金を貯めました」 絵を描くのは子どものころから好きだった。自分のやりたいことが見つかった紅子さんは、その専門学校で初めて「居場所ができた」と感じたという。 「絵や彫刻を学んでいるのは楽しかったんですが、とにかく学費がかかる。アルバイトで疲れ果ててしまったころ、『フロアレディ募集 日給1万円以上』というチラシを見つけたんです」