【“紀州のドン・ファン”事件裁判ルポ①】「須藤被告に覚醒剤を売った」 証人に覚醒剤密売人とされる男性登場の衝撃 一方の須藤被告は「野崎さんに買ってきてと頼まれた」
■第7回公判に呼ばれた証人に法廷ざわつく
入手についての証言があったのは10月1日の第7回公判です。この日は裁判が始まって以来、初めて遮蔽板が置かれていました。事前に誰が証人として呼ばれているのかを知らされていなかった報道陣はざわつきました。 遮蔽板の向こうから聞こえてきたのはしゃがれた声。なんと、証言を始めたのは覚醒剤の密売人とされる男性でした。 (証人の覚醒剤密売人) 「須藤被告から現金10万~12万円を受け取り、4~5gの覚醒剤を渡した」 他にも、田辺市内の野崎さんの自宅からわずか300メートルほどの路上で手渡し、須藤被告から電話で注文を受けたのは別の密売人だったと、内容は詳細かつ具体的でした。 一方、注文を受けた密売人の男性は11月7日の第18回公判に出廷していて、須藤被告に売ったのは偽物の“氷砂糖”だったとしています。検察側は“氷砂糖”を売ったとする証言について「覚醒剤を売ったと話せば処罰される恐れがあり、うその話をしている可能性がある」と指摘しています。
■密売人男性の証言に対し須藤被告は・・・
覚醒剤の入手方法を指し示す、とても重要な密売人の証言。それを受けて須藤被告はなんと話すのか。11月8日第19回公判で、弁護側の質問に須藤被告が覚醒剤注文の経緯について説明しました。その内容にさらに驚かされるのです。 事件の1カ月半ほど前の2018年4月1日ごろ、性的な行為がうまくいかなかった野崎さんから須藤被告はこう言われたといいます。 (弁護士)「社長からは何と言われましたか?」 (須藤被告)「『もうだめだから覚醒剤でも買ってきてよ』と言われました。冗談だと思って『お金くれたらいいよ』と言ったら社長が20万円渡してきました」 (弁護士)「お金はいつもらいましたか?」 (須藤被告)「その日だと思います」 なぜこの発言に驚いたのか。実はこれまでの裁判の中で、野崎さんの会社の元従業員や家政婦、交際相手、交流のあった人物の全員が「野崎さんは覚醒剤を毛嫌いしていた」「健康に気を使っていた」と証言をしていた上に、毛髪鑑定などから野崎さんは覚醒剤の常習者ではないとされていたからです。 須藤被告はさらに、4月7日に裏サイトで覚醒剤を注文し野崎さんは「おーありがとうございます」と受け取ったといいます。しかし、野崎さんからはその後「あれ使い物にならん。偽物や。もうお前には頼まん」と言われたと話します。 野崎さんと親しい証人の話などからすると矛盾するような証言ではありますが、密売人の1人が「偽物の“氷砂糖”を売った」と話していることからすると、筋が通っているようにも聞こえました。 11月11日第20回公判で検察側は「須藤被告が捜査段階で野崎さんから頼まれた話をしなかったのはなぜか?」と問いました。須藤被告は「言ったら怖い目にあうと思ったので言えませんでした。警察の中でストーリーがあるのかなと」と答えました。
【関連記事】
- ▶【“紀州のドン・ファン”事件裁判ルポ②】検察側の切り札!?「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」検索履歴を裁判員はどう判断するのか
- ▶【“紀州のドン・ファン”事件裁判ルポ③】きょう午後判決 最大のポイント「直接証拠なし」 須藤被告を「間違いなく犯人」と言えるのか?
- ▶「100万円を渡され、結婚してくださいと言われ、びっくりしました」 “紀州のドン・ファン”殺害事件の裁判で被告人質問
- ▶「野崎さんはあいつはあかんなと言っていた」 “紀州のドン・ファン”裁判で元従業員の男性が証言 一方の弁護側は「ドン・ファンが元妻からの離婚話で落ち込んでいた」というSNS上のやりとり読み上げ
- ▶野崎さんの死を知ったときの喜怒哀楽は「どちらかというと“無”」 紀州のドン・ファン殺害事件 被告人質問で元妻は「目の前にいたら文句を言いたい」「私は何年も人殺し扱い」