【“紀州のドン・ファン”事件裁判ルポ②】検察側の切り札!?「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」検索履歴を裁判員はどう判断するのか
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助さん(当時77)が2018年5月に、和歌山県田辺市の自宅で覚醒剤を摂取させられ殺害された事件の裁判。2024年9月12日に始まった審理は結審まで22回あり、あわせて28人の証人が出廷しました。ただ、元妻の須藤早貴被告(28)が野崎さんにどうやって覚醒剤を摂取させたのか、その直接的な証拠は示されないまま裁判は結審しています。 【①はこちら】“ドン・ファン”事件裁判ルポ 検察側は無期懲役を求刑。弁護側は無罪を主張。12月12日に判決が言い渡される予定ですが、裁判員はどんな判断を迫られているのか?裁判を傍聴した記者が3回に分けてポイントを解説します。2回目は須藤被告の「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」という検索履歴をどう判断するかについて解説します。
■検索履歴「老人 死亡」「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」
初公判の日、検察側からの冒頭陳述で示された内容に驚いたのを覚えています。それは須藤被告の検索履歴と動画の閲覧履歴でした。 ・事件の4カ月前となる1月24日 「遺産目当てと言われた女たち5選(動画名)」 ・3月31日 「老人 死亡」「老人 完全犯罪」 ・4月7日 「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」 ・4月22日 「遺産相続 専門家」「妻に全財産を残したい場合の遺言書の文例(動画名)」など。 検察側は論告で「事件の前に“老人”である野崎さんを“完全犯罪”により“死亡”させること“覚醒剤過剰摂取”により野崎さんを死亡させて“遺産相続”することを意識し関係する検索をしていた」と主張し、完全犯罪を計画したとする証拠としています。
■ただ・・・なぜか検索履歴が見つかったのはYouTubeのみ
検索履歴は重要な状況証拠として何度も裁判で審理の対象になりました。 9月17日第3回公判では弁護側の指摘により、これらの検索ワードや動画閲覧の履歴はすべてYouTubeのものであることが分かりました。その数は4951。 ただ、仮に殺人をするための方法を検索するのであれば、YouTubeだけでなくグーグルやヤフーなどの検索サイトも同時に使用しそうですが、これらには検索履歴が残っていませんでした。 この日、証人として出廷した須藤被告のスマートフォンを分析した警察官は、検察官の「YouTubeの検索履歴は多数残っているのに、ウェブサイトでの検索履歴は少ないがなぜか?」との問いにこう証言しました。 (スマホを分析した警察官) 「検索サイトでは履歴が残る設定をオフにしたと考えられます。YouTubeはオンのままだったのではないでしょうか」
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