怒号と質問が飛び交った首相会見 「36分→53分」続行促す場面も
3月14日夕、安倍晋三首相は2週間前と同じ土曜日の午後6時から記者会見に臨んだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「緊急事態宣言」を可能にする改正特別措置法や世界的に落ち込みを見せる経済への対策について説明したが、前回の首相会見で沸き起こった批判に対する配慮のような変化も見られた。 【写真】「まだ質問があります」新型コロナ対応、35分で終わった首相会見
記者から一斉に抗議
「以上をもちまして終わらせていただきます」。司会がアナウンスすると、会見場の後方や脇の方にいた記者たちから怒号のような異論が相次いだ。 「質問に答えてください」「おかしいですよ」「時間取ってもいいんじゃないですか」「総理、これ記者会見と呼べますか」 会見開始から44分、質疑開始から22分が経っていた。首相は苦笑いを浮かべた。抗議を受けて会見は続けられた。 この日は新型コロナウイルスへの政府対応を安倍首相が説明する2回目の記者会見だった。 前回2月29日の会見は、大規模イベント自粛や全国一斉休校の要請について国民に理解と協力を求めた場だったが、フリージャーナリストの江川紹子さんの「まだ質問があります」との声を振り切る形でわずか36分で終わったため、「ただの首相の演説会だ」「説明責任を果たしていない」などと批判が集まっていた。
丁寧な説明には遠く
今回の会見では、そうした国民の目を意識したかのような対応が見て取れた。 約22分間の首相の冒頭発言と官邸記者クラブの幹事社2社による質問の後、「幹事社以外からの質問をいただきます」と司会が呼びかけると、メディア各社が一斉に挙手した。 「中国全土からの入国制限は遅かったとの反省はあるか」「非常事態宣言は政権への信頼が大事だが、その信頼が失われている」など厳しい質問も飛んだ。 安倍首相は「政治の使命は国民の命を守ること。適切に判断した」などと原則論でかわした。非常事態宣言については「そう簡単な判断じゃない」と言葉を強め、「より透明性をもって、専門家の意見を聞いた上で判断する。そして判断の経緯について会見を開いて国民に丁寧に説明する」と強調した。 新型コロナウイルスの感染拡大による経済の落ち込みに対しては、「一気呵成に思い切った措置を講じていく」などと繰り返したが、経済対策の内容や規模を問われると「具体的には政府・与党と練り上げていきたい」と詳細には言及しなかった。
質問が当たり「驚いた」
約20分の首相冒頭発言と大手メディア中心の計5人の質疑の計36分で終わった前回の会見に比べ、今回は約53分という時間を取って計12人の質問に答えた。その中には、記者クラブ加盟のメディアだけではなく、政治ジャーナリストの安積明子さん、ニコニコ動画の七尾功さん、IWJの岩上安身さんといったフリーランスやネットメディアの記者も含まれた。安積さんは事前通告はしておらず「当たってとても驚いた」と語った。 前回の会見では、予定時間の超過を理由に江川さんの質問を受け付けなかった。今回は、司会が会見を終了しようとするのを安倍首相が「いいんじゃない」と遮ってみせる場面もあった。