安倍首相が辞意会見で口にした「最長政権」の反省と課題、そして成果
●長期政権のおごり
「長期政権のおごり」ともみられる問題や疑惑が、特に後半の3年間に相次ぎ、批判を集めた。この日の会見では、国有地の格安での払い下げに端を発した「森友学園問題」、財務省の公文書改ざん問題、国家戦略特区による「加計学園」の獣医学部新設問題、そして首相が主催する「桜を見る会」の招待者をめぐる問題について、記者から質問が相次いだ。 上記の一連の問題は「政権の私物化」ではないかとの問いに対し、安倍首相は「さまざまなご批判をいただいた。説明ぶりは反省すべき点もあるかもしれない」とした上で、「私物化したことはないと申し上げたい」と強調。 公文書管理の問題については「安倍政権においてさらなるルールで徹底することにしている。国会では長時間にわたって私も答弁した」。説明責任が十分だったかどうかについては「国民が判断されると思う」と述べるにとどめた。 政権とメディアの関係をめぐる質問もあった。安倍政権はこれまでの政権に比べて「徹底したメディア対策がなされた政権だ」と指摘し、特定のメディアへの出演や首相会見の事前の質問取りまとめなどをただす質問に対しては、「幹事社から質問を受けるのは安倍政権の特徴ではなく、ずっと前の政権も同じだった」と反論し、「総理大臣の発言なので正確な答弁をしないといけない」と説明。メディア出演の偏りについては「メディアに出演するかどうかはその時々の政権が判断するんだろう。いいか悪いかはそれぞれの判断」だと主張した。
●政権のレガシー
小泉政権以来の長期政権となった安倍政権のレガシーは何か。安倍首相は「まさに国民の皆さま、歴史が判断していくのかなと思う」と述べた上で、「働きたい人が働ける、働く場を作る。それを政策課題に掲げ、20年続いたデフレに(アベノミクスの)3本の矢で挑み、400万人を超える雇用を生み出すことができた」と胸を張った。 そうした経済成長の果実によって、保育の拡充、幼児教育や高等教育の無償化に踏み切ったほか、働き方改革に向けて「大きく踏み出すことができた」とした。 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の制定をめぐっては、国会議事堂前で連日、反対デモが繰り広げられるなど国論が二分された。しかし「助け合うことができる同盟は強固なものになった」と日米同盟の強化につながったと指摘し、その中で2016年、現職として初となるオバマ大統領の広島訪問が実現したことに言及した。 第1次政権と合わせれば8年8か月という長期にわたって務めた総理大臣という職責について思いを述べる場面もあった。総理総裁に必要な資質を問われた安倍首相は「総理大臣は一人でできる仕事ではない。至らない私を支えてくれた多くのスタッフの皆さんや議員のみなさんがいて、何とかここまで来ることができた。チーム力も大変重要ではないか」。