「イチ、ニ、サン…」人類はいつから「数」をかぞえていたのか。「かぞえる」から「自然数」へ、さらに「無限」までかぞえた数学者の考え方
カントールの「対角線論法」と実数の濃度
いま実数全体の集合をRとすると、Rは自然数全体の集合Aとは1対1の対応がつかないことを数学者カントール(1845-1918)が、「対角線論法」と呼ばれる面白い論法によって証明した。 その研究辺りから集合論という分野は本格的に萌芽して発展した。その歴史を遡れば、遠い昔のトークンが見えるのである。 ここで、「対角線論法」についてなるべく平易に説明しよう。準備として以下のように、どんな実数も無限小数に表せることに注意する。 ・有限小数2.34は2.34000… ・分数1/3は0.33333… ・√2は1.41421356… ・円周率は3.14159265… … すべての実数をそのように無限小数で表すとする。そして、自然数全体の集合Aと実数全体の集合Rは1対1の対応がつくと仮定して、矛盾を導くことにしよう。 いま、1が対応する実数をa、2が対応する実数をb、3が対応する実数をc、4が対応する実数をd、…とする。 aの小数第1位の数とは異なる1以上9以下の自然数の一つを、bの小数第2位の数とは異なる1以上9以下の自然数の一つを、cの小数第3位の数とは異なる1以上9以下の自然数の一つを、dの小数第4位の数とは異なる1以上9以下の自然数の一つを、…、そのようにそれぞれ順にとる。このとき、 x=0.… という無限小数xを考える。ちなみに、はxの小数第1位、はxの小数第2位、はxの小数第3位、はxの小数第4位、…。 そのようにxを定めると、xは集合Rの要素であるが、xに対応するようなAの要素は存在しない。なぜならば、 xの小数第1位を見れば、xはAの要素である1とは対応していない。 xの小数第2位を見れば、xはAの要素である2とは対応していない。 xの小数第3位を見れば、xはAの要素である3とは対応していない。 xの小数第4位を見れば、xはAの要素である4とは対応していない。以下同様。…。 したがって、「自然数全体の集合Aと実数全体の集合Rは1対1の対応がつく」とした仮定に反して矛盾である。(証明終り。)