「イチ、ニ、サン…」人類はいつから「数」をかぞえていたのか。「かぞえる」から「自然数」へ、さらに「無限」までかぞえた数学者の考え方
「自然数(正の整数)」の萌芽とは
そして、イラクのウルク出土における紀元前3000年頃の粘土版に、5を意味する5つの楔(くさび)形の押印記号と羊を表す絵文字の両方が記されているものが見つかっている。これは5匹の羊を意味しており、個々の物品の概念から分かれて数の概念が誕生したことを示している。 1950年にノーベル文学賞を受賞したバートランド・ラッセルの言葉に、「ひとつがいの雉(きじ)も、2日も、ともに2という数の実例であることを発見するには長い年月を要したのである」というものがある。 これは「自然数(正の整数)」の萌芽を意味しており、人類の歴史にとって画期的なものであったと言えよう。
「1対1の対応」とはなにを意味するのか
ここで、「1対1の対応」についてもう少し詳しく説明する例を挙げよう。 保育園に通う男の子と女の子が何人いるとき、それぞれの人数を数えることなく、「男の子は女の子より人数が多い」「女の子は男の子より人数が多い」「男の子と女の子の人数は等しい」のどれが成り立つかを確かめる方法がある。 それは、男の子と女の子が一人ずつ手を繋いでもらえばよいのである。明らかに、男の子(女の子)が余れば男の子(女の子)の方が多くいる。どちらも余らなければ人数は等しいのであって、このとき、男の子の人達と女の子の人達は「1対1の対応がついている」というのである。 明らかに、男の子(女の子)が余れば男の子(女の子)の方が多くいる。どちらも余らなければ人数は等しいのであって、このとき、男の子の人達と女の子の人達は「1対1の対応がついている」というのである。
「数」をかぞえることの本当の学びとは
小学校に入学して直ぐに学ぶ1、2、3、4、……という整数を考えると、たとえば5という数字では、紙5枚を表すことも、魚5匹を表すことも、ミカン5個を表すこともある。紙、魚、ミカン、そのような個々の物ではなく、「5」という抽象化された数を認識できるようになることは、小さい子ども達にとって易しいことではないだろう。 いわゆる「幼児教育」で、「イチ、ニ、サン、シ、ゴ、…、ヒャク、ヒャクイチ、ヒャクニ、…」と単に暗記させて唱えさせることだけが一部にある。 しかし、「1対1の対応」による自然数の理解を無視していることから、十数人程度の人数を数えられない幼児の光景を何度か目にしたことがある。これは間違った学びであり、上で「5」という抽象化された数を説明したように、「1」、「2」、「3」、「4」、……という抽象化された数を、いろいろ例を用いて説明しなくてはならない。