「ンン!」「ア!」意思に反して身体が動き、声が出る<トゥレット症>。とにかく体力を消耗、ときに骨折も…当事者が語る日常生活での「負担」
◆症状を自覚した時期 僕自身も、そんなトゥレット症の当事者の一人です。 どのような症状があるのかというと、数分間に1回のペースで、「ンッ」「アッ」などと声を上げる音声チックに加えて、まばたきや身体を動かしたりする運動チックが発生します。 そのなかには、自分の身体を叩いたり、大声で叫んだりする症状も含まれています。 僕の症状は、国内のトゥレット症当事者のなかでも、かなり重度なほうだと思います。 最初に僕がこの症状を自覚し始めたのは、小学校3年生くらいのころです。 ずいぶん幼い年齢で発症したかのように感じるかもしれませんが、一般的にはチックの症状は子どものころに発症することが多いと言われています。 多くの子どもは成長するにつれてチックがおさまっていくそうですが、なかには僕のように中学、高校、大学と、そのまま症状が続くケースもあります。 小さいころの僕は、もともとひとつの場所にじっとしていられず、おとなしく座っているとつい身体がムズムズして、立ち上がってしまう子どもでした。 そして、9歳前後になると、なぜか普通に歩けず、ヨタヨタと転ぶ動作をはさまないと歩くこともできなくなっていました。 そのころから、周囲の人から「酒井君はちょっと変わっているね」「何かあるかもしれないな」という反応を持たれることが増えていき、漠然と「あぁ、自分はほかの人とは違うのかもしれない」と考えるようになったのを覚えています。 以来、チックの症状と付き合いながら、十数年が経過しています。
◆身体の不快感と精神的なストレスを与えるチックの症状 チック症は日常生活において、さまざまな負担を与えます。 まず、代表的な負担は心身的な不快感でしょう。 チック症は不随意(ふずいい)運動と呼ばれる運動の一種で、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまうという特徴があります。 ものすごく集中して頑張れば動作を止められることもありますが、大半の場合は止めることは困難です。 みなさんは、“くしゃみ”を、自分の意思で止めたことはあるでしょうか? 頑張れば自分の意思でくしゃみは止められるかもしれませんが、かなりの努力が必要だし、無理に止めた場合は不快感も残るし、反射的に出てしまうものなので、毎回止められるものではないと思います。 チックの感覚をあえてお伝えするならば、「くしゃみが出る!」と感じたときの感覚が、身体中にずっと続いているような状態を、何十倍も不快にした感じ。それがチックの症状に近いのではないでしょうか。 チック自体による不快感のほかに、運動チックによって自分で身体を傷つける自傷行為に加え、意図しない力が身体にかかることでの関節や筋肉の痛み、音声チックで声を出し続けることによる喉の痛みなども発生します。 人によっては、激しい運動チックが発生して、骨を折ってしまうこともあります。 それに加えて、チックで身体が動き続けると、普通の人よりも運動量はかなり多くなり、とにかく体力を消耗します。 そのため、一日の終わりにはぐったりしてしまいます。
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