映画「本心」主演・池松壮亮さんインタビュー AIで亡き母と再会する近未来「誰もが自分ごと」
数年後の自分たちの実感が見えてくる
――前回は、川越宗一さんの『天地に燦たり』や山本周五郎さんの『ちいさこべ』をご紹介いただきましたが、最近おもしろかった一冊を教えてください。 柴崎友香さんの『続きと始まり』(集英社)があまりに素晴らしく、印象に残っています。コロナ禍をまたいだ数年間、別々の場所で暮らす男女のお話なのですが、小さな日々の変化を定点観測のように描写していて、その先にどういう続きがあって、どんな終わりと始まりがあるのかということを描いています。群像劇ではないのですが、接点のない3人の主人公たちが、最後見事に重なっていきます。その重なり方もとても素晴らしく、ネタバレになるのでこれ以上はお話しできないのですが、つながりの中で生きている私たちのこの世界の「続きと始まり」に余韻の深い感動を受けました。 ――平野さんもそうですが、作家さんの想像力や先見の目にはいつも驚かされます。 作家という方々の感覚をキャッチして言葉や物語にする力はすごいなと思います。この世界に漂うムードや感覚をキャッチして作品にしていくと、数年後の自分たちが実感することが見えてくるのだと思います。そうした嗅覚や感覚が優れた方の描く本は、読んでいてとても同時代的な感動を味わうことができると思っています。 <池松壮亮(いけまつ・そうすけ)さんプロフィール> 1990年生まれ。福岡県出身。2003年、映画「ラストサムライ」で映画デビュー。その後、数多くの映画やドラマで活躍、受賞多数。近年の出演作に、映画「ちょっと思い出しただけ」、「シン・仮面ライダー」、「ぼくのお日さま」「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」などがある。 オフィシャルHP https://www.sosukeikematsu.info/ (文:根津香菜子)
インフォメーション
本心 石井裕也監督・脚本。平野敬一郎「本心」(文集文庫/コルク)原作。122分。池松壮亮、 三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、綾野剛、田中泯、妻夫木聡、田中裕子ら出演。2024年11月8日(金)公開。 公式サイト https://happinet-phantom.com/honshin/ 公式X https://x.com/honshin_movie (C)2024 映画『本心』製作委員会
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