観光立国モルディブ、「リゾートの連携」をサステナビリティ推進の力に
昨年の国連総会で「地球沸騰の時代」という言葉が飛び出したように、酷暑が続いている。地球温暖化防止への意識は高まっている一方で、今年4月、温暖化の指標となる世界の平均気温偏差は過去最も高い値となり、状況に依然として歯止めがかかっていないことが明らかになった。 海面が1メートル上昇すると、国土の80%が失われると言われるモルディブにとって、温暖化を防止は喫緊の課題。そんななか、グループ全体でサステナブルなリゾートのあり方を追求しているのが、マリオットグループだ。 モルディブには7つのマリオットグループのリゾートがあり、リッツ・カールトンのGM、レナート・デ・オリビエラ氏を中心に、モルディブ・サステナブル協議会を立ち上げ、毎月各リゾートの代表者で、どのような取り組みを行っているかを話し合い、より良い環境づくりに取り組んでいる。 モルディブでそれぞれにサステナブルなアプローチをとる3つのリゾートを紹介する。 ■ドローン活用で“海ゴミ”を回収 ザ リッツ・カールトン モルディブ ファリ アイランズは、ラグジュアリーリゾート界の著名な建築家、故ケリー・ヒルの最後のプロジェクトの一つとして2021年6月にオープン。「海の循環」にインスピレーションを受け、すべてに円のモチーフが使われているのが特徴だ。 円形の水上コテージの天井には合計61枚の太陽光パネルが埋め込まれ、リゾートで使用する電力の17%がこのパネルによってまかなわれており、今後は海の上に太陽パネルを設置し、年内に25%までに増加させることを考えている。 また、アメリカで環境運動を行っている「フューチャーソサエティ」がオープン当初からコンサルティングを行い、2人のアンバサダーが所属している。そのうちの一人、オリビア・フォスターさんによると、海の中の生物多様性を人間社会に喩えながら環境教育について力を入れているのがフューチャーソサエティの特徴だという。実際にリッツ・カールトンでは、海洋学者とともにダイビングをして海について学ぶアクティビティなども行われている。 ユニークな取り組みの一つが、サステナビリティマネージャーのメリッサ・シーレさんの発案による、ドローンによるゴーストネットの回収だ。ゴーストネットとは、投棄された魚の網のことで、多くはプラスティック製で、マイクロプラスティックとして海洋を汚染するのみならず、海の生き物が絡まり死んでしまう。 モルディブ政府はサステナブルな漁業を目指して一本釣りを推奨しているが、特に12月から4月にかけて、近隣国から漂流してくるという。 リッツ・カールトンでは週に数回、ドローンで、海上にあるプラスティックの場所を特定し、施設管理用に使っているスピードボートを使って引き上げ、取り除いている。去年だけでも1.1トンのゴーストネットを取り除き、絡まっていた4匹の海亀を救った。2021年にモルディブで初めて始まったこの取り組みは、今近隣の多くのリゾートで取り入れられ、海洋を守る新しい方法として広がっているという。