【三ツ星シェフの新レストラン】注目の「フォーシーズンズホテル大阪」に新たにオープンした「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」
握りというより、魚料理の一皿的なルックスの一品も。
ボタン海老の炭火焼き。この立派な牡丹海老はカウンターで炭で炙り、ミキュイに仕上げる。
ボタン海老とパリパリ海苔の炭火焼きは、先のボタン海老をくるりと巻いて同じく軽く炙った海苔で包んで手渡される。ぷりっと歯が刺さる食感の後、濃厚な甘さがきて、ここにも生姜の香りが。 それは、みじん切りの生姜と炒った米をお酒で煮てソースにして塗っているから。巻物の変化球は料理として見事、酢飯に留まらないお米への自由な発想も、他にない凄さ。
最後は「大トロ」。これがまた唸る出来。 まずは2枚づけに驚き、そのなめらかで繊細でまるで上質な肉を思わせる握りに歯を当て嚙むと、内側に乗せていたエシャロットと揚げしょうがの香りが立ち上る。まさにこれぞヤニック・アレノの仕事、といわんばかりの完成度。今まででいちばん新鮮な大トロの味わいだった。
写真は、デザートの前の「大地と海のコンソメスープ」。
「大地と海のコンソメスープ」は、牛脂、牛筋、しめじ、椎茸、乾燥椎茸、乾燥えのき、昆布、チキンコンソメなどをじっくり抽出した、深く滋味深いスープ。
デザートも、4品。 イチゴの砂糖窯焼き、ウイキョウ 白味噌と麦のアイスクリーム、すだちのジュレ 紫蘇の天麩羅 海藻のパイ、ジャスミン・クリーム 「白味噌と麦のアイスクリーム、すだちのジュレ」は、特に複雑。白味噌と麦は焦がし風味に仕立て、お皿の淵にも京都の白味噌を炙って焦がし香をつけたものが塗ってある。かぶと生姜を合わせてコンフィチュールにしていたり、マッシュルームのキャラメルは、エキスを12時間かけて抽出していたり。
コーヒーも4時間かけて水出し。 こういうデザートを大切にするのも、日本の鮨店にはない発想かと思う。「抽出」をはじめ、随所にフランス料理の仕事が生きている。 面白いのは、ワインと日本酒と行ったり来たり、自由に合わせやすい料理だということ。 ちなみに最後の大トロには、エレガントで優しいローヌのシラーを合わせていた。エシャロットと生姜がソースの役目を果たし、ぶつからずしっくり合うのも、印象的だった。 海外で日本料理の調味料や素材を取り入れて料理をするのとは全く違ったレベルの、完全に新たな鮨料理を構築した、ヤニック・アレノシェフ。 昨今値上がりの激しい高級鮨店よりリーズナブルに、今までにない鮨の境地を味わえることは、間違いない。