「父との電話で涙があふれました…」 コロナ禍で一人暮らしの大学生が追い込まれる孤独
昨春以降、大学はオンライン講義が中心になり、大学生はキャンパスに行くこと、人と触れ合う機会が激減した。アルバイト先も働く人数を抑制しているため、収入が減っている学生も多い。特に一人暮らしの学生は、不安を抱えたり、孤立したりする人が増えた。無自覚ながら、うつ的な症状だった人もいる。二度目の緊急事態宣言が出されたいま、彼らの苦しい胸の内を聞いた。(サイエンスライター・緑慎也/Yahoo!ニュース 特集編集部)
帰省もせずマンションで一人暮らし
「自分がウイルスを持ち帰るかもしれないので、実家には1年近く帰省していません。電話もしないので、親は私の状況を知らないでしょうね」 新潟県出身で東京都内の大学2年の海野瑞希さん(仮名)は、昨春以来、心細い日々を送っている。川崎市のワンルームマンションで一人暮らし。「おしゃべり」を自認するが、コロナ禍で大学に通う機会が減り、人と会わない期間が断続的に続く。人と会話する機会が極端に減ると、気持ちの落ち込みを感じることがあるという。 特にひどかったのは、昨年5月頃だ。 「『あの頃の瑞希は別人みたいだった』と今でも友達に言われます。『静かで、人格が今と違ってたよ』って。人と話さないことは、私にはよくないんだなって思います。でも、当時は自覚できませんでした」
海野さんは実家から毎月8万円の仕送りを受けている。家賃に充てながら、光熱費や食費は自身のアルバイトで賄ってきた。おもなバイトはキャラクターショップの販売員。だが、昨春の緊急事態宣言で店は営業自粛となり、一時働くことができなかった。その頃から海野さんは自身のメンタルの揺れを感じるようになった。アルバイト収入が減ったことによる不安だった。 「お金がないと、心のゆとりもなくなるんだなって思いました。だんだん不安になっていきましたね。どうしようかなと……。バイト先のショップは楽しさや充実感のある場所です。なのに、そこで働く機会が減って、私の生活の中で大事なものが欠落した感じがしました」 この時期にもう一つ感じていたのは、「こんなはずではなかった」という思いだ。海野さんは1年生のときにうまく友達をつくることができず、2年生になったら「友人づくりを頑張ろう」と考えていた。だが、新型コロナウイルスの影響で授業はオンライン講義になり、キャンパスに行くことができない。友達をつくる機会がなく、一人でいる時間ばかりが増えた。