「父との電話で涙があふれました…」 コロナ禍で一人暮らしの大学生が追い込まれる孤独
「2019年の入学時に上京が遅れ、すでにできあがっていた女の子グループに入れなかったのです。そこで昨年はじめに、近所の交響楽団に入会したのですが、同世代がおらず友達ができませんでした」
SNSに助けを求める
大学やバイトに行けず、親しい友人もいない――孤立を深めるなかで頼ったのはSNSだった。インスタグラムで見知らぬ人の一人暮らしを見て生活をまねし、一人暮らしを前向きに楽しもうとした。また夜には、高校時代の友人2人とLINEのグループトークに明け暮れた。とくに話題があったわけではなく、「その日、何をしていたとか、こんなツイートがあったとか、くだらない話」だった。徹夜で話すこともあり、生活リズムが乱れた。 「家にずっといるから、とくに話題はないんです。でも、寂しいし、話すことでなんとかやっていました」 気分が変わったのは、夏になり、少しずつ外出するようになってからだという。また海野さんは5月から7月までの3カ月間、日記もつけていた。 「相当メンタルが落ちてる時期で、日記をつけて自分に対して前向きにしようと、言い聞かせていました。いま思うと、その日記に吐き出していたんでしょうね」
1割以上に中等度のうつ症状
コロナによる休校やオンライン講義が続くなか、大学生のメンタルの落ち込みが懸念されている。昨年8月、秋田大学は同大の学生5111人を対象にしたアンケート調査で、回答者の1割以上に、中等度のうつ症状が見られたことがわかったと発表した。困っていることとして学生が一番多く挙げたのは、友人や家族などの支援(ソーシャルサポート)を受けられないことだった。また調査では、うつ症状になりやすいリスク要因として、「女性」「県外出身(一人暮らし)」「喫煙」「飲酒」などが挙げられた。 同様の調査は茨城大や九州大などでも行われているが、やはり学生の1~2割程度にうつ症状や気分の落ち込み、不安症状が見られたという。東北大学災害科学国際研究所准教授で精神科医の國井泰人さんは、コロナ禍の現状では、こうした状態になるのは珍しくないという。 「大学ではもともと不適応をきたす人は少なくありません。高校と違って、履修によって講義やクラスメートがバラバラになるうえ、実家を出て一人暮らしを始める人もいます。生活環境が大きく変わり、孤独になりやすい。それに加えてのコロナ禍。メンタルの状況が悪化するのは無理もないことなのです」