次の地震は本当に来る?「予知」できない地震への防災対応を考える
(1)半割れケース
全世界で1904~2014年に発生したM8.0以上の地震103事例を調べると、うち7事例で、1週間以内にM8クラスの地震が近くで続けて発生していました。数十分の一ほどの確率です。 南海トラフで発生した地震に限ってみると、データ数は少ないものの、直近2事例(1944年の昭和東南海地震と1854年の安政東海地震)では、東側で地震が発生した32時間後と2年後に西側で地震が発生しています。
南海トラフ地震は、30年以内に70~80%の確率で発生するとされています。期間を30年から1週間に縮めて計算すると、地震の発生確率はおおよそ0.05%。数千分の一の確率です。この平均的な状況に比べると、半割れケースでは、次の地震の発生頻度が100倍程度高いといえます。これらのデータから、東側の領域で大規模地震が発生した場合には、西側領域でも大規模な地震が発生する確率は通常よりも高まっていると評価できるとされました。 (※ちなみに、先に想定震源域の西側で大規模地震地殻変動する事例は、これまで確認されていません。ただし、可能性が全くないわけではありません)
(2)一部割れケース
同様に、全世界で1904~2014年に発生したM7.0以上の地震1437事例のうち、地震発生後に同じ場所でM8クラスの地震が続けて発生した事例は、最初の発生から7日以内で6事例ありました。数百分の一の確率です。 南海トラフ沖において、M7.0以上M8.0未満の地震は、直近約100年で7回ありましたが、その後すぐに、より大規模な地震が発生した事例は確認されていません。しかし、2011年の東北地方太平洋沖地震では、2日前にM7クラスの地震が発生していました。 よって、半割れケースに比べれば可能性は低いものの、平常時に比べたら大規模地震発生の確率が相対的に高まっていると評価できるとされました。
(3)ゆっくりすべりケース
「ゆっくりすべり」とは、プレート境界面の断層がすべる現象のうち、グラグラと地面を揺らすような地震をあまり発生させない、ゆっくりとしたすべりのことを指し、それ自体は南海トラフでも普段から観測されています。 注目すべきは発生のパターンで、チリとメキシコで起きた2つの地震では、後の大規模地震の震源域と関連する異常な分布のゆっくりすべりが前兆としてあったことが指摘されています。その前例から、南海トラフでも異常なゆっくりすべりが観測された場合には、地震発生の可能性が高まっているといえるとされました。ただし、事例数が少ないため、(1)(2)のケースのように、どれくらい可能性が高まっているのかの定量的な評価はできません。