MEMS(メムス)とは何か簡単に解説、マイクなど「1人100個超」使用している身近な技術
今や私たちの生活には欠かせない自動車やスマートフォン。これらの高機能化・高性能化を支えているのが、MEMS(メムス)だ。MEMSとは、わずか数ミリメートル角以下の微小なチップに、センサーやアクチュエーター(駆動機構)を備える、微小な電子機械システムのことを言う。自動車の安全装置や自動運転装置、スマートフォンのほかにも、ワイヤレスイヤホン、インクジェットプリンタのプリンタヘッド、医療機器などにも使われ、1人が日常的に利用するMEMSの数は100個以上ともされる。そんな身近な技術であるMEMSの基礎知識について簡単にわかりやすく解説する。 【詳細な図や写真】図1:代表的な活用事例としては自動車やスマートフォンが挙げられる(筆者作成)
MEMSとは何か、半導体との違いは?
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電子機械システム)とは、数ミリメートル角程度のシリコンウェハー、ガラスウェハー、有機フィルムなどの上に、数マイクロメートルサイズのセンサー、(機械的に動く)アクチュエーター、電子回路などを、微細加工によって作りこんだデバイスである。 MEMSの製造には、半導体集積回路の製作技術などが活用されるが、従来の回路のような平面的な積層構造とは違い、ある部分が基板から分離しているような立体構造を備えている。この立体的で可動部を有している構造は、一般の半導体素子と異なる点である。 たとえばスマートフォンでは、特定の電波を選択するためのBAWフィルター、加速度センサー、ジャイロセンサー、マイクロフォン、気圧センサーなどの複数のMEMSが利用されている(後ほど解説します)。 MEMSはさまざまな製品の中で使われているが、特に自動車やスマートフォンでの利用が代表的だ(図1)。 MEMSは、圧力・磁気・静電・熱といった物理現象を電気信号に変換するセンサー機能と、逆に電気信号を与えることによって可動構造体を動かすアクチュエーター機能の双方を実現でき、応用範囲が広い。 スマートフォンと自動車のほかにも、たとえば、インクジェットプリンタのプリンタヘッド、プロジェクターや光造形式3Dプリンタや半導体露光機に使われるデジタルミラーデバイス(DMD)、DNAチップ、光通信用光スイッチ、レーザープロジェクター等に使用されるガルバノメーターなど、さまざまな製品に採用されている。