次の地震は本当に来る?「予知」できない地震への防災対応を考える
「連動」して起こる傾向がある南海トラフ地震
「南海トラフ沿いの地震」は、太平洋沿岸の中部から九州の東まで広がる大きなプレート境界面(南海トラフ)の断層がもたらすもので、その規模の大きさから、最悪の場合、死者が32万人を超えるなど甚大な被害が想定されています。 ずれ動くとされる想定震源域のうち、一部のみがずれ動く可能性もあります。一言で南海トラフ沿いの地震といっても、さまざまなパターンがあり得るのです。そうした中で、次に起こる地震をピタリと当てる“予知”は、やはりできません。しかし、過去の地震をみると、想定震源域の東側がずれ動いて地震が起きた後、西側が連動する形で数日~数年後という、地質学的には比較的短期間のうちに次の大地震が起こる傾向がありました。これを未来に当てはめると、一部がずれ動いたとき、次に起こる地震を警戒することができます。 こうした南海トラフ地震特有のケースを具体的に想定して、防災対応の方向性を定めたのが冒頭の政府方針です。幸いなことに、南海トラフ沖では東海地震を想定した対策をきっかけとして、地震動や地殻変動の観測網が日本の中でも特に充実しています。最初の断層活動を観測できる可能性が高い環境なのです。
地震発生の「高まり具合」が異なる3つのケース
「次の地震」に備えた避難などの防災対応を住民や企業に求める具体的なケースとして、方針では以下の3つを想定しています。 ------------------------------ (1)半割れケース 南海トラフの想定地震域内の東側半分の断層が動き、M8クラスの大規模地震が発生した場合 (2)一部割れケース 南海トラフの想定地震域とその周辺の一部の断層が動き、M7.0以上8.0未満の地震が発生した場合 (3)ゆっくりすべりケース 揺れを発生させない「ゆっくりすべり」と呼ばれる断層活動が通常とは異なるパターンで観測された場合 ------------------------------ それぞれのケースが起きた時、私たちはどのような状況になるのでしょうか? 「半割れケース」では、南海トラフの東側が最大震度7の揺れに見舞われ、すでに被害が出ているような状況の中で、西側も含めて次のM8クラスの大地震へと備えることになります。 一方、「一部割れケース」では、震源地に近い沿岸地域を中心にある程度の揺れは感じるものの、そこまで大きな被害は出ていない状況。「ゆっくりすべりケース」は、揺れすら感じていない中で、防災対応を取るような状況です。 それぞれの状況で、なぜ次に続く大規模地震の可能性が高まったといえるのか、順に根拠をみていきましょう。