「ブッシュ大統領に礼を言われたよ」めったに人を褒めない首相にねぎらわれた官僚 明かしたのは30年前の日米首脳会談成功の内幕と、トヨタ自動車が示した誠意
「後日談があってね。会談から1年たった93年の正月、豊田さんから宴会場で声をかけられました。『棚橋さん、やってみるものですね』と」 ―やってみる、とは。 「豊田さんは日米交渉後、アメリカに行ってレンタカーで主要部品メーカーを回ったというんです。技術と財務の専門家を乗せて、チームを作って米国の全土を回ったと。アメリカの自動車メーカーで日本の自動車の部品を技術的に作れるかどうか。三十数カ所を回ったと言っていた」 ―口約束で終わらせず、自ら目標達成に動いたわけですね。 「そんなことまでしていただいたのかと驚いた。豊田さんは人柄が真面目だから。約束した以上はやらなくてはいけないと。トヨタのおかげで官民一体となってできました」 × × × 棚橋氏は91年から93年まで事務次官を務めた。退官後、2001年から石油資源開発社長、08年同社会長。現在、シティユーワ法律事務所で弁護士・弁理士を務める。