高川学園が8強進出…なぜ世界を驚かせた奇想天外な”グルグル円陣FK”が誕生したのか?
奇想天外なセットプレーからゴールを連発し、日本だけでなく世界中から注目を集めている高川学園(山口)が、劇的な勝利の末にベスト8進出を決めた。 第100回全国高校サッカー選手権大会の3回戦が2日に行われ、高川学園は等々力陸上競技場で仙台育英(宮城)と対戦。ともに無得点で迎えた後半終了間際に、直前に投入されていたFW西澤和哉(3年)がファーストタッチで決勝ゴールを叩き込んだ。 高川学園は星稜(石川)を4-2で撃破した1回戦で直接フリーキックを得た際に、相手ペナルティーエリア内で5人の選手が手をつなぎ、輪になって回転した直後に散開。ノーマークになったFW林晴己(3年)が先制ゴールを決めた。 常識にとらわれない“グルグル円陣作戦”の映像はSNSを介して世界中に拡散され、岡山学芸館(岡山)との2回戦ではバージョンアップさせて再びゴールを奪取。一転して仙台育英戦では“囮”に使うしたたかさも見せ、ベスト4へ進んだ2007年度の第86大会以来、山口県勢としても14大会ぶりに準々決勝へ駒を進めた。
期せずして高川学園のベンチから大きな声が上がった。 「行けっ!」 3分が表示された後半アディショナルタイムが、1分を回った段階で獲得した右コーナーキック。ベンチに後押しされるように、6人の選手が手をつないだ。 ペナルティーエリア内のファーサイドで、円になった状態でグルグルと回り始める。そして、キッカーのDF山崎陽大(3年)が利き足の左足を振り抜く直前に散開。仙台育英のマークを翻弄しながら、全員が相手ゴール前へ迫っていく。 星稜との1回戦で鮮やかに成功させ、日本だけでなく世界中を仰天させた“グルグル円陣作戦”を、輪を形成する人数を増員させて発動。この場面は相手キーパーがポストに身体を激突させながら必死にボールに触り、左コーナーキックに逃れた。 なおも続くチャンスでは輪を作らなかった。ファーサイドに6人が集まった状態から突進していく。そのなかの一人で、江本孝監督から「ぶち込んでこい」と背中を押され、直前にピッチへ投入されていた西澤の脳裏にひらめくものがあった。 「ボールがちょっと短くて、セカンドボールの勝負になると思って」 山崎のコーナーキックがクリアされると感じた西澤は突進をやめ、やや後方にポジションを取り直した。予感はすぐに現実のものになる。こぼれ球に反応しかけた味方に「どけっ!」と大声を発し、左足による豪快な決勝ボレーを突き刺した。