内村航平(元体操日本代表)「体操を知らない人が見ても美しいと思えるような演技が目標でした」──パリ2024オリンピック特集「レジェンドが名場面を振り返る」
内村航平にとっての最高の演技
──それだけの覚悟で挑んだオリンピックで、最高の演技ができたと自分でも納得した瞬間はありますか。 ロンドンの個人総合の跳馬と、リオの個人総合の鉄棒です。 ──ロンドン五輪は日本人選手として28年ぶりの個人総合金メダルを獲得、リオ五輪は最後の鉄棒で大逆転をして個人総合2連覇を達成しました。以前のGQによるインタビューでは、「ぴたりと着地するのはあたりまえで、会場の時間を止めるぐらいの着地が理想」とおっしゃっていましたが、この2つは時間を止められましたのでしょうね。 そうですね、グサッと刺さった着地でした。 ──パリ五輪に出場する選手たちにも、「着地が大事」とアドバイスしているとうかがっています。そもそも着地の難しさはどこにあるのでしょう。 9つの難しい技をやって、10番目が着地なんですね。体力的にも精神的にも一番厳しいところで着地を決めなければいけない。だから9つの技のうち4つは中難度の技にするとか、構成をしっかりと練る必要があります。着地から逆算して構成を組み立てるという側面もあるし、着地が決まらない演技構成は組まないと僕は決めていました。 ──美しい体操というのが内村さんの特徴ですが、具体的にどこに美しさが表れると思われますか。 空中でぐるぐる回るわけですが、選手それぞれ高さの出し方が違うので、ほかの人には出せない放物線を描くことだと思います。もうひとつ、素早い動きとゆっくりの動きと静止、緩急のめりはりをつけることにも美しさが表れると思います。 ──映像技術の発達により、内村さんの演技はかなり分析されていたのではないかと推察しますが、本人には研究されている自覚はありましたか。 多少はありましたけれど、表面的に分析してもただのモノマネにしかならないので、いくらでも研究すれば、という感じでした。自分にしか出せない美しさがあって、しかも誰が見ても美しいと感じる演技を目指していました。体操関係者が見て美しいと感じるのはあたりまえで、体操を知らない人が見ても美しいと思えるような演技が目標でした。 ──(話をうかがっている)今日はちょうど開幕1カ月前ですが、過去4回のオリンピックを振り返ると、1カ月前は何%ぐらいの仕上がり具合でしたか? 60%ぐらいですかね。残り1カ月で80%ぐらいまで上げて、現地で残り20%を積み上げる感覚です。現地に入ると練習環境が変わって一度コンディションが落ちるので、それを見越して徐々に上げていくように調整していました。 ──OBのひとりとして、男子体操団体をどのように予想していますか。東京五輪はわずか0.103ポイント差で中国に敗れ、銀メダルでした。 あくまで金メダルを争うのは日本と中国。3位になることは絶対にないと思っています。2位と3位はかなり点数が離れるでしょう。日本と中国は僅差で、本当にどちらが勝つか予想できません。完全に50対50で、痺れる戦いになるでしょうね。
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