内村航平(元体操日本代表)「体操を知らない人が見ても美しいと思えるような演技が目標でした」──パリ2024オリンピック特集「レジェンドが名場面を振り返る」
橋本大輝へのアドバイス
──GQでインタビューした橋本大輝選手は、「ケガをして苦しかった時期もあったけれど、内村さんの言葉に救われた」とおっしゃっていました。 NHKの番組で、僕と比較されるかもしれないけれど、橋本は橋本のまんまでいいし、ジコチューでやったほうがいいということは伝えました。多少なりとも役に立っているなら、うれしいです。 ──体操以外に、楽しみにしている競技はありますか? やっぱり回転する競技に興味があります。BMXとかスケボーとか、回転したりひねる競技は、やっていることがなんとなくわかるんで、見ていておもしろいです。着地がポイントになるのも体操と共通していますね。だから選手のキャラクターとか結果よりも、こういう身体の使い方をしているのかとか、運動として見てしまうところがあります(笑)。 ──引退してから、後進の指導や競技の普及など、セカンドキャリアについて考えたりなさいますか。 多少はありますけれど、体操は続けているので、やることは変わらないです。試合があるかどうかは別として、やっぱり自分が体操をやっているのが一番楽しいんだな、ということは改めて感じました。言葉にするのが難しいんですが、体操を続けないともったいないと思っちゃうんですね。小学生に講演をしても、話なんて聞いていないんです。でも目の前でバク転をすると、「うわー」ってなるし、ずっと心に残る。それで体操に興味を持つ子どもが増えればうれしいし、動けるうちは動いておかないともったいないと思うんです。 ──パリ五輪に挑む選手たちは強烈なプレッシャーにさらされると思いますが、内村さんはどのようにプレッシャーを跳ね返しましたか。 どれだけ準備を突き詰めるか、ですね。準備の段階で土壇場の状態を想定しておけば、実際にそうなったときに自信を持って演技ができる精神状態に持っていける。その場しのぎではどうにもならないので、とにかく準備ですね。 ──よく、心技体という言葉を使いますが、内村さんの場合は心と技と体の割合はどのくらいでしょう。 心が9ですね。技と体が0.5 ずつ。技と体はトップレベルにあるのがあたりまえですが、オリンピック選手でも今日は練習に行きたくないと思うものなんです。そこをどう乗り越えていけるのか、どうやって強い精神状態を保つのかが大事なので、心が9です。
内村航平 元体操日本代表 1989年、長崎県出身。両親ともに元体操選手で、父親がスポーツクラブ内村で指導を行うという環境で3歳より体操を始める。中学卒業と同時に上京、朝日生命体操クラブで練習を積む。2008年、日本体育大学在学中の19歳で北京五輪に出場、個人総合と男子団体で銀メダルを獲得。2012年のロンドン五輪と2016年のリオ五輪では個人総合で2連覇を果たした。2016年からは初のプロ体操選手として活動、2021年の東京五輪と世界選手権に出場した後、2022年1月に引退を発表した。現在は日本体操協会の理事を務める。 文・サトータケシ 編集・神谷 晃 AKIRA KAMIYA(GQ)
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