宇佐美はアギーレジャパンの切り札となれるか?
日本代表入りへの抱負を聞かれた選手は、たとえ胸中に自信を抱いていたとしても、ほとんどが謙遜気味な言葉を返してくる。昨シーズンの得点王に輝いたFW大久保嘉人(川崎フロンターレ)も、ブラジル大会代表にサプライズ招集されるまでは「マジで選ばれたいね」を繰り返していた。 しかし、FW宇佐美貴史(ガンバ大阪)は違う。ハビエル・アギーレ新監督のもと、今月28日に発表が予定されている新生日本代表入りへの自信を問われると、間髪いれずにこう答える。「あります」。その、あまりに短すぎる言葉の裏にある自信を彼に代わって補足すると……ガンバはJ1再開後で無傷の5連勝をマーク。5試合で15得点に対してPKによる1失点と攻守のバランスのよさでも突出し、5位にまで順位を上げてきた。波に乗るチームの中で宇佐美は4ゴールをマークし、攻撃陣をけん引している。 敵地で大宮アルディージャを2対0で一蹴。自らも後半6分にダメ押しとなる今シーズン5ゴール目をあげた9日の第19節後に、宇佐美はこう語っている。「(アギーレ監督は)来日してからどんどんJリーグの試合を見ていくと思いますけど、僕はガンバを勝たせ、できるだけ上位に導いていくことだけを意識する。その中で高いパフォーマンスを続けられれば自然と(代表に)呼ばれると思う。プレーで『呼んでください』という意思を表現できればいいし、他の選手にはないような、本当に自分にしかできないプレーをこれからも突き詰めていきたい」。 22歳にしてエースの風格を漂わせる宇佐美が追い求める、「自分にしかできないプレー」とは何なのか。ガンバの梶居勝志強化本部長が目を細めながら指摘する。「ドリブルの切れ味とフィニッシュの精度の高さでしょうね」。アルディージャ戦では、宇佐美に搭載された2つの武器が大いなる威力を発揮していた。まずは前半40分。ゴール中央、ペナルティーエリアのやや外側からドリブルを仕掛ける。左へ切れ込むと見せかけて素早く右を突く宇佐美の動きの前に、対面にいたDF横山知伸の反応はすべて後手を踏んだ。 横山を抜き去ってから放った右足のシュートこそ必死に飛び込んできたDF今井智基に弾かれたが、細かいステップ、アジリティー、スピードの三拍子がそろったドリブルは圧巻だった。他人には真似されないという自負があるのだろう。ドリブルの極意を、宇佐美は惜しげもなく明かす。「相手の腰の角度や間合い、あとはカバーにきている選手の位置などを見ながら、その時々で判断を変えてやっています。相手を抜くコツですか? やっぱり間合いじゃないですか。相手を抜ける選手は独特の間合いを持っていると思いますし、自分のスピード、歩幅、瞬発力に合った間合いというものが必ずあるはずなので、完璧な間合いを見つけられるようにしています。もっと、もっと抜いていけると思うので、その意味ではまだまだですね」。