自民党の“どん底”時代を知る元総裁・谷垣禎一が語る「安倍晋三・石破茂・小池百合子」それぞれの本性
● 小池百合子の暴走をどうしたものか 思案の最中に起きた運命の事故 自転車に乗るときは考え事をしてはいけません。集中しないと危ないのです。それなのに、あの日は考え事をしてしまったんですね。後から考えると、桜田門の近くにある段差からドンと落っこちたのだと思います。けがをした瞬間のことは全然覚えていません。 落車した後、とにかくまず座ろうと思ったんだけど、自分では動けないことに気づきました。そのとき、ジョギングをしていた女性に「動かないで!私は医療関係者です」と止められた記憶が、かすかに残っています。選挙期間中に自転車に乗ってけがをするなんて、全く、不徳の致すところです。 《次に気が付いたときには、都内の病院の集中治療室で横たわっていた。頸髄を損傷し、思うように体を動かすことができない。一時は気管切開をしていたため、口頭で会話をすることも難しかった》 集中治療室には1カ月半ぐらいいました。結構な大けがですよね。最初は呼吸のために、のどに穴をあけてパイプで空気を通していました。そうすると声を出せないので、意思疎通するのに非常に不便に感じました。体を動かせないばかりか、口頭で指示を出すことさえできないのですから、とても仕事ができる状況ではありませんでした。
《2019年5月、東京都の有識者懇談会「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」の名誉顧問に就任した。小池百合子知事からの直々の就任要請を受け入れたが、2016年7月の知事選の経緯から、すぐに受諾する気にはなれなかった》 小池さんもマメな人でね。私の入院中は病院の下を通りかかると「今、下を通っています」とメールをくれることがあったんですよ。名誉顧問を頼まれたのは退院後。私の家にお見舞いに来られたときでした。移転問題でいろいろあった市場の果物を手土産にね(笑)。 ただ、小池さんに言われたからといって、すぐ引き受ける義理はなかったんです。私がけがをしたのは、小池さんの出馬で自民党が分裂した知事選のときでしたからね。 でも、「障害者の気持ちがわかる人にやってほしい」と言われると、それでもノーとはなかなか言えませんでした。知事選の経緯がどうであろうと、パラリンピックの応援団は引き受けざるを得ない。多少はお手伝いしないといけないと思ったのです。
谷垣禎一/水内茂幸/豊田真由美