自民党の“どん底”時代を知る元総裁・谷垣禎一が語る「安倍晋三・石破茂・小池百合子」それぞれの本性
私が執行を命じた死刑囚はほとんどが虐待を受けており、「こんな育て方をされちゃかわいそうだな」と思うような子供時代を送っていました。いろいろ事情はあると思いますが、子供は誕生を祝福され、生まれてきてよかったと思える環境で育つことが大事だと、つくづく思います。 1人だけ、タイプの違う死刑囚がいました。高校の同級生が「あいつはクラスのホープだった。必ずひとかどの人間になると思っていた」と証言していたのです。死刑判決を受けるような残虐な罪を犯す人に、こういう証言が出てくるのは珍しい。不思議に思っていると、秘書官が「これはばくちです」と言いました。ばくちに狂い、カネに困って犯した罪だったのです。 私がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の法整備に慎重だったのは、そういう人の死刑執行を命じなければならなかったからです。カジノは地域の発展に役立つかもしれない。ばくちをやった人がみんな犯罪に手を染めるわけでもないでしょう。それでも、もろ手を挙げて賛成する気にはなれないのです。
● 安倍晋三の気合いに押され 幹事長の重責を引き受けた 《2014年9月の内閣改造・自民党役員人事で、幹事長に起用された。総裁経験者が幹事長に就くのは初めてだった。消費税率の引き上げ判断や安全保障法制の見直しなど、政権の行方を左右する難題を抱えていた当時の安倍晋三首相(党総裁)は、党運営の安定性を重視し、苦しい野党時代に総裁を務めた谷垣氏を党の要に据えることを決めた》 もう総裁もやりましたから、自分の政治生活はだいたい終わりだと思っていました。改造前に法相を務めたのも、安倍さんに「何かやってくれ」と頼みこまれたからで、もともとやるつもりはなかったのです。その後に幹事長を打診されるとは、全く予想していませんでした。 都内のホテルでひそかに会い、最初は「法相で最後のご奉公のつもりですので」「将来性のある方になさっては」としぶったのですが、あのときの安倍さんは集団的自衛権の行使を可能にするための法整備をするということで、かなり気合が入っていました。「いろんなことに目配りをしなければならない。ぜひお願いしたい」と言われ、引き受けざるを得なくなりました。