「痛いほど分かる」「いや信じられない」。高知県南国市、「ハガキでごめんなさい」全国コンクールで見えてきた、世代による「ごめん」の変化
コンクールから感じ取れる家族関係の変化
安岡事務局長も「このハガキを書いた人の気持ちや、選んだ側の気持ちはよく分かります。私も父母が忙しくて運動会に来られず、祖父が来たことがありました。『自分だけ、おじいちゃんなんて』と恥ずかしい思いをしました」と話す。 だが、安岡さんより少し下の世代になると、受け止め方が少し違うようだ。 「子供が少なくなり、家族の仲もよくなりました。意識や体験が違うのです」と安岡事務局長は言う。 家族関係の変化はコンクールに寄せられたハガキからもうかがわれる。子や孫にキスをして「ごめんなさい」というハガキが入賞するようになったのは近年だ。息子に「あなたのファーストキスは、パパです。ママは、口は遠りょしてたんだよ。パパから守ってあげられなくてごめんなさい」(第16回優秀賞)、「初孫がかわいすぎて娘に口にだけはやめて~と言われているチューを何百回もしてしまいました。ごめんなさい」(第17回優秀賞)などという具合だ。初期の入賞作には見られない。 「運動会も一人の子に対して、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんと、皆で来るのが当たり前になりました。動画を撮影したり、弁当を食べたりと、皆で楽しみますよね」と安岡事務局長が付け加える。 「私はその世代です」と、南国市観光協会でコンクールを担当する竹中瑞紀さん(31)は言う。
「私達の世代には恥ずかしいなんてあり得ない」
竹中さんは「おばあちゃん子」だった。「私もほぼ祖母に育てられましたが、運動会に来てくれたら、とっても嬉しかったので、私達の世代には恥ずかしいなんてあり得ない話です。ハガキを読んだ時には、驚いてショックを受けました」 祖父母に「来るな」と言った世代は「悪いことをしてしまったな」とほろ苦く思い出す。一方、祖父母が来ると嬉しくてたまらなかった世代にとっては、同じ話が「信じられない」と映る。家族の在り方が変化し、共感の質も変わった。 安岡事務局長は「実行委員会は年配の人が多いので、『筆者の気持ちがよく分かる』と話していた人もいます。でも、そのうちに審査員の年代が下がると、こうしたハガキは選ばれなくなるのかもしれませんね」と話していた。 ちなみに、「祖母の弁当」について書いた筆者からは受賞決定後、南国市長と実行委員会委員長宛てに手紙が届いた。表彰式には出られないという連絡で、あわせて「ごめんなさい」について考えたことが記してあった。
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