なぜ久保建英と堂安律のホットラインが機能したのか…Uー24代表がガーナに6-0圧勝
オーバーエイジの一人として先発したボランチ遠藤航(シュツットガルト)が、前方にいた堂安へボールを預ける。このとき、右サイドにいた久保が斜め左前方へ走っていく。堂安からパスを受けて仕掛けるも、マークに来たガーナ選手と交錯した。 ペナルティーエリア内の右側へこぼれていくボールを見た瞬間、久保の脳裏にはゴールを決める絵が浮かび上がった。ワントップの上田綺世(鹿島アントラーズ)がモードを攻撃から守備へ素早く切り替え、ガーナの選手と競り合おうとしていたからだ。 「フィフティー、フィフティーのボールなら上田選手が勝ってくれると思って、(ゴール前へ)入っていきました。そこでしっかりと勝ってくれて、自分の方を向いたのでボールを要求して、いいコントロールができた。あとは落ち着いて流し込むだけでした」 身体の強さを生かしながらボールを収め、身体を反転させた上田と久保がイメージを共有する。堂安もペナルティーエリア内へ入り込んできたが、すでに開通していたホットラインに気がつき、上田から久保への横パスをスルーした。 左足でボールを止めた久保はそのまま前へ進みながら、重心を左から右、再び左へ瞬時に、そして細かく移動させる。これが絶妙のフェイントとなってガーナのキーパーを惑わせ、左足から放たれた久保のシュートに対する反応を遅らせた。 U-22代表として出場した2019年3月のU-22東ティモール代表戦以来となる、東京五輪世代となる年代別代表で決めたゴール。前日4日に「大人のサッカー、大人の自分を見せたい」と20歳になった抱負を語っていた久保にとって、試合の流れをさらに日本へ引き寄せる、テクニックと冷静さを融合させた有言実行の一撃となった。 カメルーン、コートジボワール両代表と対戦した昨秋のA代表のオランダ遠征で、すれ違う形で出場していた堂安と久保が同じピッチで共演するのは、2019年11月のU-22コロンビア代表戦(エディオンスタジアム広島)以来となる。 もっとも、当時は[3-4-2-1]システムで左右対のダブルシャドーを形成するも上手く噛み合わず、攻撃陣全体も機能しないまま試合も0-2で完敗した。 コロンビア戦より前にA代表へ招集されはじめていた久保と、A代表の[4-2-3-1]の右サイドハーフで重なっていたポジション争いを問われるたびに、堂安はやや困惑した表情を浮かべながら、3歳年下の久保についてこう言及していた。 「建英の存在には刺激しか感じないですよ。建英の成長によって焦らされる自分がいるので。生かし、生かされながら、チームのためにいいプレーができればと思う」 東京五輪のグループリーグ初戦、7月22日のU-24南アフリカ代表戦を想定したU-24ガーナ代表戦は、攻撃陣のなかで化学反応が起こる要素が揃っていた。 遠藤に加えてセンターバック吉田麻也(サンプドリア)、右サイドバック酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)と、A代表でも主力を担うオーバーエイジがそろって先発した相乗効果に、堂安は「あの3人は頼もしすぎます」と声を弾ませた。 「後ろに3人がいるだけで、前の選手はすごく伸び伸びとプレーさせてもらいました」