なぜ五輪代表は同じチームコンセプトのA代表に完敗したのか?
選手をはじめとする周囲への気配りを常に忘れない、温厚で律儀な性格で知られる指揮官が、珍しく言葉のなかに感情の一端をのぞかせた。 「今日出たメンバーのすべてではないですけど、物足りないところがあった。東京五輪の金メダルを目指して戦ってきたなかで、今日の試合強度のなかでしっかりと自分のプレーを発揮できるくらいでなければ目標達成は難しい」 ジャマイカ代表と対戦する予定だった3日の日本代表の国際親善試合が中止となり、同じ日時に札幌ドームを舞台に急きょ組まれた、東京五輪世代となるU-24日本代表とのチャリティーマッチ。史上初の“兄弟対決”として注目された90分間で3-0の快勝を収めた直後に、A代表の指揮を執った森保一監督はさらに厳しい言葉を続けた。 「しっかりプレーできる選手でなければ、最後の選考の日本代表メンバーに入ってくるのは難しい」 代表監督を兼任するU-24代表のプレーぶりを、目の前で見た率直な思いを問われた直後の言葉だった。ともに[4-2-3-1]システムで対峙し、コンセプトも共通する両チームを分け隔てた物足りなさは、前半開始直後から露見されていた。 左サイドで得たスローインを起点に、A代表のMF南野拓実(サウサンプトン)が強引にペナルティーエリア内へ侵入し、相手を引きつけた直後に後方へパス。ボランチの守田英正(サンタ・クララ)が、すかさずサイドを右側へ大きく変えた。 パスの軌道が高く、体勢を崩しながら胸でトラップした右サイドバックの室屋成(ハノーファー96)は、それでも素早く反転。マークする左サイドバックの旗手怜央(川崎フロンターレ)を振り切り、ゴール前へ鋭いクロスを放った。 ゴール前で生まれた混戦はこぼれ球をゴールラインの外へ、旗手が頭で押し出す形で逃れた。間近にA代表の選手がいたわけではない。それでも、何重にもなって襲いかかってくるかのようなプレッシャーを旗手は覚えていたのだろう。