「医療用大麻ビジネス」は海外で右肩上がり 日本が参入する日は来るのか
12月12日に施行された「改正麻薬取締法」および大麻取締法を改正した「大麻草栽培規制法」によって、「大麻ビジネス」が注目を集めている。 【画像】「医療用大麻」市場はどうなる? 上場会社も出てきた、日本で注目のスタートアップ、「大麻」をじっくり見る(全10枚) と聞くと、正義感の強い方などは「社会全体で若者の大麻汚染を厳しく取り締まっていかなければいけないときに、このバカライターはなんて不謹慎なことを」と、怒りでどうにかなってしまうだろう。 ただ、ここでいう大麻とは、多くの方が頭に浮かべる「娯楽用大麻」ではなく、「医療用大麻」のことだ。 あまりそういうイメージがないだろうが、大麻草からは100種類にも及ぶカンナビノイド成分が抽出できる。中には、てんかん治療薬や多発性硬化症の疼痛緩和薬、がん疼痛治療薬、さらにはサプリメントとして活用されているものもある。そんな「医療用大麻」の需要が今、世界的に右肩上がりで成長しているのだ。 市場調査会社SDKI(東京都渋谷区)の発表(2023年12月25日)によると、医療用大麻の市場規模は2023年に約169億米ドルを記録し、2036年までに同494億米ドルに達するという。 この勢いをさらに後押しするのが、米国の規制緩和だ。2024年5月、米司法省が大麻を危険性の低い鎮痛剤などの薬物と同じ分類にした。ご存じのように、米国では「娯楽用大麻」を解禁する州が増え、大麻関連企業が急成長し、中には株式上場するところもある。 この経済トレンドはゴールドラッシュになぞらえ「グリーンラッシュ」と呼ばれ、トランプ政権ではさらに加速して、「大麻ビジネス」が世界的巨大産業に成長するのではないか、と予測する専門家もいるほどだ。
乗り遅れている日本企業
では、そんな大きなビジネスチャンスに日本企業はどう対応しているのかというと、毎度おなじみのことだが、ガッツリ乗り遅れている。 今回の法改正で「大麻草からつくられた医薬品の使用」が認められたことで、てんかん病患者が、大麻成分CBDを用いた治療薬「エピディオレックス」を薬事承認後に使えるという大きな成果はある。しかし、現時点で国内大手企業がこの分野に参入したという話も聞かないし、そもそも社会の注目が集まっているとも言い難い。 「日本は日本! 海外のおかしなルールなんて、まねしなくていい。そもそも大麻合法化した国で治安悪化や薬物依存が問題になっていることを知らないのか」というお叱りを頂戴しそうだが、ガッツリ乗り遅れているのは、まさしくそのように「大麻=社会悪」ということを国家を挙げて教育してきたことが原因だ。 それがよく分かるのが、今回の法改正での「厳罰化」である。これまでは大麻の所持や譲り受けは4年以下の懲役だったが、懲役7年に引き上げられた。新たに設けられた「使用」も同じだ。 これまで日本の法律で「大麻は薬効がない」とされてきたのだが、世界的な潮流を受けて「麻薬」という位置付けに変わった。そのため、覚せい剤などと同じ刑罰にそろえられたのだ。