新年に始めたい!「感謝日記」でモチベーションを呼び起こす
感謝でウェルビーイング。幸福度UPに視点取得も
──「感謝日記」がモチベーションアップに効果的なことはわかったのですが、普通の日記ではダメなのでしょうか。 山岸先生:モチベーションアップを目的としたこの行動において、大事なのは日記を書く行為ではなく、日常の中で見落としがちな「感謝感情」を拾うことです。 研究では、普通の日記を書くグループ【A郡】と「感謝日記」を書くグループ【B郡】 に分けて実験をしたのですが、【A郡】が書いた普通の日記の中には、日々取り組んだことに加えて、反省のような内容が多かったのです。 ──反省は大事だけど、それゆえに身近な感謝を見落としがちに。 山岸先生:はい。普段の生活の中での身近な感謝って本当はたくさんあるはずなのだけど、どうしても見落としてしまっているものなんですよね。そこで、意識的に普段見過ごされがちな「感謝感情」に目をむけるための媒体として取り組みやすい「感謝日記」を提案していますが、その方法は特定の相手に向けた感謝の手紙やEメール(グラティチュードレター)でもいいし、感謝を伝えたい人に直接伝えに行くのだっていいのです。 他にもアメリカのJacobさんというジャーナリストが取り組んで知られるようになった「グラティチュードトレイル」というのも有名です。これは何かが自分に届くまでの道のりに関わる全ての人々を思い描き、その人たちに感謝状と共にありがとうを伝えるというプロジェクトのこと。 発起人のJacobさんは“1杯のコーヒーが自分に届くまで”をテーマに、コーヒーを売る店の店員さんからスタートし、およそ6ヶ月かけてコーヒー豆を栽培している人にまで会いに行くというトレイルを行いました。(参考:https://www.youtube.com/watch?v=L375-rWJVmU) 私の授業ではこれを踏まえて、学生たちにそれぞれのトレイルを思い描いてもらい、プレゼンテーションの実施と感謝状を届ける、というプロジェクトも行っています。 学生の中には学食の調理スタッフさんに手紙を渡した人、遠方に住む友人に感謝を伝えるために会いに行った人もいましたね。 なお、【A郡】【B郡】ともに日記付け実施の前後には、心理指標となる「モチベーション」をはじめ、「幸福度」「視点取得」など、複数の項目の数値を計りました。その後も1カ月後、2カ月後、3カ月後に同様の心理指標の計測を行い、改めて、感謝の気持ちを持つとモチベーションが高まることがわかり、加えて、幸福感のUP、感謝の気持ちを持つことで相手の立場を考えられるようになること(視点取得)も証明することができました。