なぜ54歳の“キングカズ”は新天地に“4部”JFL鈴鹿を選んだのか…「J3昇格チャンスがある。情熱をこのクラブに伝えたい」
今シーズンのJFLは16チームが所属。そのなかで百年構想クラブには、鈴鹿以外にラインメール青森、クリアソン新宿、ヴィアティン三重、FC大阪、奈良クラブ、大分が名を連ね、新宿と大分以外にはJ3ライセンスが交付されている。 J3への昇格、すなわちプロとなるJクラブ入りをかけて、ホーム&アウェイ方式で年間30試合を戦うJFLの厳しさは、もちろんカズのもとへも届いている。 「技術や戦術よりもフィジカル的になるとよく言われますけど、自分のなかでは想定内。サッカーの根本、そして勝つことの厳しさはどこでも変わらないと思っているので」 今シーズンの開幕は3月13日。その前の2月26日に55歳の誕生日を迎えるカズは、ピッチに立つたびにJFLの最年長出場記録を、ゴールするたびに同じく最年長得点記録を更新する。もっとも、プレーするカテゴリーを昨シーズンのJ1から3つ下げたからといって、そう簡単にはいかないとカズ自身が覚悟を決めている。 「僕にはゴールを取らせたくないと、対戦チームは思っているんじゃないかな。55歳の選手に取られたくないという思いがあるはずだけど、だからこそ自分が求められるゴールに強くこだわっていく気持ちがないと取れないと思っています」 何よりも三浦監督のもとで、ポジションが約束されているわけでもない。単身で乗り込んだサッカー王国ブラジルで、努力と苦労を重ねた末にプロになって37年目。加入会見に先立って、この日から始動した新天地の練習に参加。約1時間半にわたって汗を流したカズは、はやる気持ちを必死に抑えながら前をみすえた。 「移籍するたびに力がちょっと入りすぎて、トレーニングもしすぎてそれがマイナスになったこともあるので、ちゃんと自分と向き合いながら、自分がどうあるべきか、これからどのようにやっていかなければいけないのかを噛みしめながら進んでいきたい」 開幕戦は百年構想クラブのひとつ、青森をホームの四日市市中央緑地公園陸上競技場に迎える。三重県が生み出す第1号Jクラブを、かつて横浜FCの指揮を執った樋口靖洋監督に率いられる三重と争っていく構図にも闘志をかき立てられる。 それでも、カズを突き動かすものは別の次元に、愛してやまないサッカーに失礼のない人生をとことん突っ走りたい、という熱き思いに凝縮されている。 「自分がここまでサッカーに向き合ってきた気持ちは、これからも変わらない。特に新しく何かをやるよりは、いままでの情熱をこの鈴鹿という新しい場所で、さらに燃え上がらせていけたら。自分の情熱をこのクラブに伝えられたら、と思っています」 Jリーガーではなくなることなど、気にも留めていない。永遠のサッカー少年は代名詞でもある「11番」を背負って躍動する自分の姿を、ゴールを決めて“カズダンス”を舞う姿を思い描きながら、長丁場のシーズンを戦い抜く身体を作り上げていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)