なぜ54歳の“キングカズ”は新天地に“4部”JFL鈴鹿を選んだのか…「J3昇格チャンスがある。情熱をこのクラブに伝えたい」
どのような存在だったかと問えば、そろって「お互いに背中を追いかけてきた」と返ってくる。憧れであり、最も身近なライバルでもあった兄に甘える思いは、もちろんカズ自身も抱いていない。兄弟タッグを問われたカズはこんな言葉を紡いでいる。 「初めてなので兄弟でやりにくいことも今後あるかもしれませんし、もしかすると闘うときもあるかもしれないし、でもそこはお互いにプロ同士として意見を共有させていきたいし、そうしたなかで新しい自分を見つけられたら。自分はいまでも上手くなりたい、上手くなれると思っているので、この鈴鹿ポイントゲッターズ、三浦泰年監督のもとで毎日練習して、試合を迎えるなかで成長したいと思っています」 昨シーズンのJ1リーグ戦でわずか1試合、しかも1分の出場に終わった悔しさから、カテゴリーにはこだわらずに出場機会を求めるカズの獲得をクラブ側へ進言した三浦監督も、もちろん弟を思うセンチメンタルな感情に動かされたわけではない。 「グラウンドのなかでグッドスタンダードになれる、いい手本になれる選手が来たので、選手たち全員が意識を高く持って成長できる環境ができたと思う」 身体に対する日々の入念なケアを含めて、サッカーへ常に真摯に取り組むレジェンドの加入を、三浦監督は現場を束ねる立場から笑顔で歓迎した。その上で、距離感を保つのは難しいのでは、という質問に「楽しみの方が先行する」とこう続けた。 「ただ、楽しむためには苦労しなければいけないし、必死にならなければいけない。苦しみの数ほど楽しむ、ということを実感できると思うので、カズだけでなくすべての選手に対してそういう目線でいるので、この状況をしっかり楽しんでいきたい」 4部リーグにあたるJFLからJ3へ昇格するには、まずはJリーグ百年構想クラブに認定され、さらにJ3クラブライセンスを取得。その上で競技面の条件、具体的にはJFLで4位以内に、なおかつ百年構想クラブのうち上位2位を満たさなければいけない。 すでに百年構想クラブに認定され、J3ライセンスも交付されている鈴鹿は、昨シーズンのJFLでクラブ最高位の4位に入った。しかし、百年構想クラブ内では優勝してJ3へ昇格したいわきFC、3位のヴェルスパ大分に届かず昇格を逃した。