考察『光る君へ』12話 倫子(黒木華)はついに道長(柄本佑)と!庚申待の夜だもの、まひろ(吉高由里子)は朝まで飲めばいい
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。12話「思いの果て」では、まひろ(後の紫式部/吉高由里子)と左大臣家の姫・倫子(黒木華)のあいだに育つ友情、ともに思いを寄せる道長(柄本佑)との関係が身分の差で決まっていくさまが描かれました。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載第12回です。
なつめの最期、紫の上の最期
冒頭で為時(岸谷五朗)の妾(しょう)・高倉の女……なつめ(藤倉みのり)が臨終の床で、得度を受けている。亡くなる前に剃髪し、仏門に入ることで、極楽浄土への往生を願う儀式だ。 なつめは出家得度して、別れた夫のもとにいる娘にも会えて。穏やかな臨終でよかった……伴侶を最期まで慈しみ、愛で満たされたという気持ちで彼岸に旅立たせるなど、誰にでもできることではない。為時に拍手を送りたいし、父と妾の関係を尊重して動いたまひろ(吉高由里子)も偉い。 翻って『源氏物語』第40帖・御法、光源氏の妻である紫の上の最期を考える。同じように娘(実の娘ではない)・明石の中宮が見舞ってくれるものの、なつめのように心穏やかな、幸せそうな様子ではない。 為時となつめの姿を目にしたまひろがあれを書いたとすると、これからドラマの中で一体どんな経験をするのか……いや、まひろが見たのがたまたま夫婦の着地点であっただけで、これまで彼女は妾として、心穏やかではない長い時を過ごしてきたことだろう。嫡妻のちやは(国仲涼子)が密かに溜息をついたのと同じ数、あるいはそれ以上の夜を経てきた筈だ。そこに思い至り、書いたのかもしれないとも思う。
なつめの娘・さわと『落窪物語』
父は今の妻の子たちばかり可愛がるとまひろに訴える、なつめの娘・さわ(野村麻純)の話に、平安時代版シンデレラ『落窪物語』を思い出す。着ている物や彼女のあっけらかんとした様子を見ると、あの作品のように虐待されてはいないだろう。しかし家に居場所はなさそうだ。 「父からおなごは何もするなと言われています」 「まひろ様に色々教わりとうございます」 何もさせないのが女を守ることだと考える男は、かつていたと思う。ひょっとしたら 現在でもいるかもしれない。そしてそういった形で守られたくはない、何かをしたいという女は、今も昔も変わらず存在する。さわはそんな娘らしい。 それにしても、さわは面白い。まひろから様々なことを教わりながら活き活きと過ごす。まひろも姫君サロンのメンバーとは違うタイプの、気の置けない友人ができて楽しそうだ。 紫式部は『紫式部集』での友人との和歌のやり取りがあり、『紫式部日記』でも友人や同僚についての記述が印象深い。このドラマで、まひろと女性たちが交流を深めていくのが楽しみだ。