考察『光る君へ』12話 倫子(黒木華)はついに道長(柄本佑)と!庚申待の夜だもの、まひろ(吉高由里子)は朝まで飲めばいい
「ハナクソのような女との縁談あり」
宣孝(佐々木蔵之介)から、まひろの婿に実資(秋山竜次)をというサプライズ提案。 そう。実資の最初の妻、「日記に書いてください、日記!日記!」の桐子(中島亜梨沙)は亡くなってしまっている。親しみやすい夫婦像で、ドラマを楽しく盛り上げてくれた。既に故人であるのは残念だ。 実資の赤痢、彼の日記『小右記』には永延2年(987年)5月29日、一日で10回もお腹を下したと記されている。そして、病気の間はドラマと同じく毎日多数の見舞客があったことも。こういった細かなことが作品の中に組み込まれているのは嬉しい。そして見舞いがてら、まひろを売り込みに行った宣孝は、 「あれは駄目だ、もう半分死んでおる」 死にません。89歳まで生きます。 しかし十分な医療が受けられない時代の下痢症状はつらいだろうな……実際、史実の実資はこの翌月の半ば頃まで苦しんでいる。 持ち込まれた縁談について、実資は「ハナクソのような女との縁談あり」……誰がハナクソだ、失礼な。しかし実資から見れば、まひろの父・為時は自分の昇進を止め「義懐ごとき」を重用した花山帝(本郷奏多)の取り巻きの一人で、帝の出家と共に官職を失った男。政治的には大敗北した家の娘である。そういった事情で困窮し「北の方が亡くなったそうで、ちょうどよい」という思惑が透けて見えるから、腹立たしいのではないか。まひろ個人にはなんの咎もないんだけど。 実資が考えを改める場面が、のちのちあるといいな……。 宣孝が書物に忍ばせた「見えておる」絵による直接的なメッセージ。卑猥な題材の絵……後世、春画と呼ばれる類の絵は、日本では平安時代初期にはあったとされる。中国の房中術の書物がはじまりという説があるので、ドラマの中で登場した絵のモデルが大陸風の装いなのはそのためかも。
道長が知らない、妾の心
道綱(上地雄輔)は、今週も道長(柄本佑)と親しくつきあっている。 そして道綱が語る、妾の立場。 「それなりに大事にしているけれど、妾の側から見るとまるで足らぬのだ」 「妾は常に辛いのだ」 夫と共に暮らした嫡妻・時姫(三石琴乃)の子である道長が知らない、妾の心。それをよくわかっている道綱……兼家(段田安則)の妾である道綱母・寧子(財前直見)の考えかと思ったが、見ていればわかるのだと話す。 彼は自分のことをうつけと言うけれど、優しい人だ。