考察『光る君へ』12話 倫子(黒木華)はついに道長(柄本佑)と!庚申待の夜だもの、まひろ(吉高由里子)は朝まで飲めばいい
仮名を稽古する道長
まひろと道長、それぞれの人知れぬ懊悩。 道長が仮名の稽古をしている。しかも指導は三跡(平安時代中期の書の名人)のひとり、行成! こんな贅沢なトレーナーが他にあろうか。彼らが勉学に励むとき(第3話)漢字を練習していた。この頃、漢字は主に公文書で使用されていた。対して、仮名はプライベート……女性との和歌のやり取りに使われていた文字だという。 なぜ道長は仮名の上達を目指すのかといえば、女性に綺麗な字で文を送る必要があるからだろう。そう、心のままに恋文を送ったまひろではなく「必要だから」手紙を出す相手だ。
頼忠退場か
公任(町田啓太)の焦り。摂政家に気圧されて太政大臣である父・頼忠(橋爪淳)が引退すれば、内裏での後ろ盾を失うことに……。 道兼(玉置玲央)についてゆけと指示する頼忠だが、(花山帝を退位させた)寛和の変の謀は道兼が要であったと知って、それを兼家が道兼を頼りにしているからと判断したらしい。 根本的に善人なんだな……というか、父が息子をただの道具として扱っている、汚れ仕事をさせる駒としているなど、普通は思い当たらないよな。うん、頼忠は悪くない。 政界引退ということは、もうドラマに出てこないのだろうか。声が小さく(彼の台詞では毎回リモコンでボリュームを上げていた)酒に酔ったときのみ大声が出るという不思議なキャラの立ち方をした、品の良い大臣であった。退場なさるのはとても淋しい。
それを声に出せ!
庚申待の夜。都の人々がオールする夜、60日ごとに巡ってくるこの習わしは、若者はよいがお年寄りにとっては結構つらい行事だったのではないかと、つい自分になぞらえて考えてしまう。実際は長く続き、江戸時代頃には皆でどんちゃん騒ぎする風習に変化したようだ。 庚申待を楽しく過ごそうと思ってか、まひろのもとに集まる惟規(高杉真宙)と、さわ。 そしてまひろへの恋文で大騒ぎ……道長の名前を見ても今をときめく摂政家の三男だとピンとこないのか惟規、ほんとに君ってやつぁ。出世と縁がなさそうだな! それでこそ惟規。 妾でもいい、やはりあなた以外の妻にはなれないと告げるために六条の荒れ屋敷に駆けつけるまひろだが、道長の口からは 「左大臣家の一の姫(倫子)に婿入りすることになった」 衝撃の告白。なんとか表情を繕って倫子様は素晴らしい方だ、どうぞお幸せにと言えたまひろ……がんばった。よく堪えた。 「幸せとは思わぬ。されど地位を得てまひろの望む世を作るべく精一杯努めよう」 お前のために政略結婚するんだからな? と言いたげ。そりゃそうだけど、なんちゅう言い草だ。しかし、道長の心の中では (妾でもよいと言ってくれ) どうせならそれを声に出せ!とは思ったが、ああでも、声に出したとしても、もうまひろに「妾でもいい」は言えない。嫡妻が倫子様では……。