考察『光る君へ』12話 倫子(黒木華)はついに道長(柄本佑)と!庚申待の夜だもの、まひろ(吉高由里子)は朝まで飲めばいい
段田安則と益岡徹
左大臣・源雅信(益岡徹)に婿取りの圧をかける摂政・兼家。もう初手から打診ではない。左大臣様のお心の内をお聞かせいただきたく……とか、お願いいたしますとか、言葉は丁寧だが、完全に命令である。 この場面は段田安則と益岡徹とのベテラン同士、息を合わせての演技がやりやすいのか、芝居のテンポが素晴らしい。まだまだこの二人を観ていたい。
まひろと倫子の友情の邪魔
まひろが下女のように働いていると聞いたときの、姫君サロンメンバーの同情と気まずい雰囲気がきつい……みじめにならぬよう、家の仕事は案外楽しいと明るく話すまひろと、それを受けての倫子(黒木華)の助け船がよい。 床を磨く時は板目が様々な模様に見えて飽きない、というまひろの言葉に、皆で板目を眺めて楽しい模様探しをする。 立場上、たしなめねばならぬが、その声に厳しさを含ませず、明るく温かい空気を壊さない赤染衛門先生(鳳稀かなめ)も素敵だ。音楽もあいまってホッとする。 まひろと倫子の間に友情が育まれているのに、ここに左大臣家の婿・道長という爆弾がぶち込まれるのか……。 しかし、第6回のレビューでまひろと道長、この時点で結婚してしまえばいいのに! と言っておいてなんだが、今はまひろと倫子の友情の邪魔をしないでくれ、このふたりと関係ないところで結婚してくれとまで思ってしまっている。 道長に「勝手なことを言うな!」とキレられそうだが、本音である。
楽しい左大臣家
愛する娘・倫子から道長と結婚したいという直訴を受けて、ほとほと弱り切る雅信に笑ってしまった。畳みかける穆子(むつこ/石野真子)……今回も母娘の見事な連携プレイ、左大臣家の場面は本当に楽しいなあ。倫子の額に触れる小麻呂の前足、その前足と勝利の握手を交わす倫子に、思わずニコニコする。 ただ、父さえ説き伏せれば、道長を婿とすることになんの障害もない倫子……まひろとの、なんという差であろうか。それを思い、ニコニコがスッと引っ込んだ。
明子は知っているのか
姉・詮子(吉田羊)から、倫子だけでなく明子(瀧内公美)も猛プッシュされる道長。明子の父・源高明が大宰府に追いやられた事件については、レビュー第10回で触れた。 詮子はこの結婚で明子を慈しみ、高明の怨念を鎮め、醍醐天皇の御孫君という高貴な血を一族に取り込む……という計画だという。 ちょっと気になっているのだが、詮子は明子に、道長は左大臣家の倫子との縁談も同時進行であると話しているのだろうか。左大臣家では道長を婿入りさせる前提で盛り上がっている。道長と道綱の場面で「嫡妻は一緒に暮らしているけど、妾は……」という話があった。このままゆけば、嫡妻は倫子だろう。 明子は兄・俊賢(本田大輔)に「(父の無念を晴らせるなら)我が心と体なぞどうなってもよい」と語るが、それは憎き兼家の息子の妻となることは構わないという意味ではないだろうか。まひろでさえ「私は、妾になるのは……」と悩んでいるのだ。いくら父が失脚したとはいえ帝の孫、女王という身分の彼女が妾となることを承知しているのか。 詮子「妻を娶るなら一人でも二人でも同じでしょ」 これは強者の言い分である。 倫子が嫡妻であると知っても復讐という目的がある以上、明子は屈辱と怒りを表には出さないかもしれない。しかし、宇多天皇に繋がる倫子はともかく、道長の心がまひろにあると知った時はどうなる……波乱の予感がする。