公共交通の崩壊=医療崩壊? 北海道「通院100km」問題が示す、地域格差の辛らつ現実とは
市場原理が招く地方医療の危機
一方でこうした不公平を緩和する配慮もある。 写真は東北のある駅の待合室に設置してある「診察券受付機」である。この地域の鉄道は1~2時間に1本しかないが、沿線のいくつかの駅に受付機が設置してあり、そこで手続きすれば受け付けしたものとみなして移動時間を待ち時間として相殺できるシステムである。 いずれにしても、前出のバスの運行方式でも同様だが、こうした配慮をするにもコストはかかるし複数の組織間で調整が必要となる。個別の医療機関や交通事業者の負担に任せるのではなく、制度面・費用面で公的に配慮する必要がある。 スペースの関係で今回は触れないが「医療」とともに「教育」も非常に似た性格があり、交通と密接に関係する。評論家の内田樹氏は、地方の医療機関の閉鎖・統廃合が進み、特に出産できる施設の激減を指摘している。 改めて最初の図を見ると、総合病院でさえ産科がない施設が多いことに驚く。内田氏は、医療と教育は市場原理に委ねている限りは大都市への集中が不可避であり、「市場の要請」を 「人間の要請」 に置きかえることが本来の政治の仕事であると指摘している。(『週刊金曜日』2024年10月25日号)交通の面でも全く同じだろう。
上岡直見(交通専門家)