全てのホテルにプールが必要なわけではない ディズニーホテルにとっての「ラグジュアリー」とは?
ここでもホテルミラコスタを指標としました。まずは設備面から、「どんな客室のつくりがいいのか?」 ホテルミラコスタでいちばん喜ばれているお部屋と言えば、ハーバーに面したお部屋です。ポルト・パラディーゾ・サイドの客室で開業当時から不動の人気を誇っています。 それで、ファンタジースプリングスホテルのラグジュアリータイプ「グランドシャトー」では、全部屋にバルコニー(もしくはテラス)をつけました。さらに片廊下のつくりを採用して、すべてのお部屋からパークが見られるように設計したのです。 続いて、客室以外のホテルの施設についても考えました。 ホテルミラコスタに併設された施設では、どのようなものが喜ばれているか? 残念ながらホテルミラコスタに、「これはファンタジースプリングスホテルにも必要だ!」と思えるほどの施設はありません。たとえば、ホテルミラコスタには豪華なプールがありますが、一般的なリゾートホテルと比べると、あまり使われていないのが実情です。 その理由を考えてみれば、みなさんもすぐに思い当たるでしょう。 ゲストのみなさんの目的は、パークに行くこと。「プールやスパに行く時間があったら、もっとパークに長くいたい!」。みなさんそう考えているのですね。 ですから、ラグジュアリータイプのホテルをつくるからといって、施設を豊富にこしらえる必要はないだろうと考えました。ファンタジースプリングスホテルには、プールもスパ施設もバーもありません。 サービス面でも、同じように「ゲストのみなさんは、どんなサービスを求めているんだろうか?」と考えていきます。 たとえば、都内のラグジュアリーホテルに泊まるお客さまであれば、「予約困難な都内の有名レストランの手配をしてほしい」とか、「贅沢なスパで半日リラックスしたい」といった要望をコンシェルジュに伝えるかもしれません。コンシェルジュはそれに対応できるよう、さまざまな準備をしているでしょう。わたしのヒルトン時代もウェスティン時代も、コンシェルジュたちはそのように働いていました。 では、ファンタジースプリングスホテルのキャストも、そういった要望に応えられる備えをすべきでしょうか? 東京ディズニーリゾートのディズニーホテルにその必要はないようです。ディズニーのパークに遊びに来たゲストのみなさんから、そのような一般的な要望はあまりありません。 それよりなにより、ゲストのみなさんが願うのはパークのこと。 パークを満喫できるサービスや特典をご用意し、パークでの過ごし方をご提案したりするサービスのほうが、ずっと喜んでいただけるものになるはずです。 ファンタジースプリングスホテルのキャストは、パークの知識を持ち、パーク関連のご質問に応えられるよう万全の備えを行っています。 これが、「お客さまが求めているものを提供する」という成功への道だと思っています。
チャールズ・D・ベスフォード