全てのホテルにプールが必要なわけではない ディズニーホテルにとっての「ラグジュアリー」とは?
ホテルが乱立し、多く存在する時代ですから、ほかではなく自分たちのホテルに来ていただくためには、ちがいをわかりやすくアピールすることは非常に重要です。 自分たちの狙いを「ひとつ」に絞るには、勇気が必要です。あれもこれもと複数の道を残したくなるのもよくわかります。しかし、自分たちの強みやアピールポイントがわからないようでは、お客さまの目にも「その他大勢」として映るのは当然のこと。自分たちのことを知り、お客さまのニーズを深く掘り下げていけば、必ず「ひとつ」の道が見えてくるはずです。 ■ ディズニーホテルにとってのラグジュアリーとは 「お客さまが求めるものを提供する」というわたしの信念が顕著に表れた例として、東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルの話をしたいと思います。 ファンタジースプリングスホテルを開業するにあたって、わたしたちがいちばん考えたのは、「ディズニーホテルにとってのラグジュアリーとはなにか?」でした。 一般に「ラグジュアリーホテル」と言えば、海外の富裕層をメイン顧客として見込んでいる場合が多いと思います。 しかし、わたしたちは、そうしたゲストばかりを想定していません。ターゲットとしたのは、既存の日本人リピーターのみなさんを含むすべてのゲストです。 ファンタジースプリングスホテルができる前まで、日本のディズニーホテルのなかでは、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタがもっとも高価格帯のホテルでした。 実はホテルミラコスタでは、高価格帯のお部屋から早く予約が入る状態が何年も続いていました。しかも、年に10回以上も宿泊してくださるリピーターの方も多くいらっしゃいます。 つまり、こうしたゲストのみなさんは、「最上の体験を満喫したい!」「もっとディズニーの世界を楽しみたい!」というニーズを抱えているわけです。 ですから、東京ディズニーリゾートでこれまで以上のサービスを届ける「ラグジュアリーなホテル」をつくったとしても、そうした既存のリピーターのみなさんが宿泊してくださるだろうと思うことができました。海外からのゲストを新規マーケットとして狙わなくとも、十分運営がかなうだろうと考えたのです。 では次に、「そんなゲストのみなさんはなにを求めているのだろうか?」という点を考えなくてはなりません。