全てのホテルにプールが必要なわけではない ディズニーホテルにとっての「ラグジュアリー」とは?
モノ消費からコト消費への移行を追い風に、日本のテーマパーク業界で圧倒的な強さを見せる東京ディズニーリゾート。“夢がかなう場所”での体験は多くの消費者の心を捉え、その唯一無二の空間とホスピタリティは、リゾートとその近隣エリアにある6つの「ディズニーホテル」でも再現されている。本連載では、ディズニーホテルの運営会社ミリアルリゾートホテルズを率いるチャールズ・D・ベスフォード氏が自身の考え方を明かした『ホテルの力 チームが輝く魔法の経営』(チャールズ・D・ベスフォード著/講談社)から、内容の一部を抜粋・再編集。ディズニーブランドとその顧客を徹底的に意識した独自の経営スタイルに迫る。 第3回は、ディズニーの世界観をホテルで再現するための「選択と集中」を解説する。 ■ 自分たちの狙いを「ひとつ」に絞る もちろん、注意点があります。「どんなお客さまが来るか」というターゲットや、「どんなことを求めているか」というニーズを考えるとき、あれもこれも盛り込みたいと欲張りになってはいけません。 実際にホテルを運営すれば、さまざまな目的を持った、バラエティに富んだお客さまがいらっしゃいます。そうした多様なお客さまのご要望すべてに応えたいと思う気持ちもよくわかります。 ファミリーが来るからキッズスペースも必要だし、ビジネスパーソンも来るから都会的なバーとフィットネスジムも必要。外国から来るお客さまがいるから和のテイストを入れてデザインすべきだし、アーティスティックなお客さまもいるから最新のアートも取り入れるべきで…。 そんな調子では、特徴のないピントのぼやけたホテルになってしまいます。 結局、どのお客さまに対しても「求めているもの」を満足できるレベルで提供することはできない。いずれはすべてのお客さまから、そっぽを向かれてしまうことになりかねません。 わたしは、ターゲットも、ニーズも、ひとつの要素だけにフォーカスすべきだと思っています。そうすることでホテルとしての目的が定まり、真にお客さまのニーズに応えることがかないます。わたしたちで言えば、「ファミリー」で、「想い出づくり」。 それだけに注力するのです。 ひとつに集中することで、ほかのホテルとの差別化も図れます。