「点滴怖いけど頑張れる」闘病の子に寄り添うファシリティドッグ 小児病棟に広がる笑顔 #病とともに
常勤では日本でわずか4頭が活動
マサは2019年3月にオーストラリアで生まれた。生後3カ月で日本に渡り、ファシリティドッグとしてのトレーニングを始めた。 まずは人の生活する環境に慣れるところからスタートし、そこから小さい子から大人までいろんな人間と触れ合うトレーニングに移る。場所も少しずつ変えていき、最終的には病院に慣れていった。 ファシリティドッグは「ハンドラー」と呼ばれるパートナーと一心同体で活動する。そのためハンドラーは1頭につき1人しかいない。日本では現在、常勤のファシリティドッグとしては全国4つの病院で1頭ずつが活動しており、そのパートナーであるハンドラーも4人だけである。 マサのパートナーを務めるのは権守礼美(ごんのかみ・あやみ)さん。もともと看護師で、以前勤めていた病院にファシリティドッグがいたことからその存在を知った。国立成育医療研究センターでの導入が決まり、ハンドラーの募集が始まると応募し、パートナーに選ばれた。2021年5月のことだった。マサと一緒に生活を始め、トレーニングも重ねた。2021年7月からマサとともに同センターで勤務している。マサとは仕事もプライベートもいつも一緒だ。
「最初は病院外でトレーナーから犬の行動やマサの特徴についてレクチャーを受けました。それで『指示出し』など基本的な練習を繰り返しました。病院で活動を始めてからも最初は半日の出勤で、少しずつ病院に行く頻度や時間を増やしていきました」 覚える指示の数は約60と、とても多い。その上、その指示を出すタイミング、(声の)トーン、ターゲット、という「3T」が大事だとされ、マサとの絶妙な連携を磨くために日々スキルアップに努めている。 なぜそこまでの対応が必要かというと、マサの活動は、患者の状況によってやるべきことが変わってくるからだ。ベッドから出られない子もいれば、歩き回れる子もいる。犬が好きな子もいれば、そうでない子もいる。安全に、かつ効果的にマサが活動するにはどうするか。それは権守さんだけではなく、看護師や保育士とも連携して決めている。