「全国イベント全面解除ではない」爆発的な感染拡大へにじんだ危機意識
今後の新型コロナウイルス対策をめぐり、注目を集めた政府の専門家会議の見解が19日夜、公表された。日本国内の流行状況について、現時点ではメガクラスター(巨大な患者集団)の発生は起きていないと推測されるとしたものの、爆発的に患者が急増する「オーバーシュート」が突然起こり得ることや、それによって欧州のような都市封鎖といった事態につながりかねないという文言が並ぶなど、危機意識がにじんだ内容となった。 【図解】満員電車のリスクは? 専門家会議が示した日常生活の考え方とは(9日の見解) 全国的な大規模イベントなどの自粛解除についても、経済活動とのバランスを踏まえつつ、「全面的な解除ではない」「条件が整わなければ中止判断も」などと主催者に慎重な判断を求めた。
突然「オーバーシュート」が起こり得る
「重要なのは、この感染症は、気が付かないうちに市中に感染が広がり、あるとき突然、爆発的に患者が急増するいわゆるオーバーシュートが起こり得ること。これが起こると、医療体制に過剰な負担がかかり、適切な医療提供ができなくなる。そうした事態を回避するための提言をまとめた」 専門家会議で副座長を務める地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は、記者会見で新しい見解を発表するにあたり、こう切り出した。 前回9日の専門家会議の後、世界保健機関(WHO)が「パンデミック」(世界的流行)との認識を表明するなど、感染拡大は急速に世界で広がりつつある。 新見解の中でも、欧州や米国で患者が急増し、中東、東南アジア、アフリカでも大規模な感染が広がっていると推定されることから「感染者ゼロを目指す国内での封じ込めは困難な状況」だとの現状認識を示し、海外からの持ち込まれるウイルスへの対応などが必須だとした。
国内の対策は「一定の効果はあった」
日本国内では、2月24日に専門家会議が「ここ1、2週間が感染が急増するかどうかの瀬戸際」とする見解を発表して以降、安倍晋三首相が2月26日、27日に相次いで全国の大規模イベント自粛や一斉休校の要請を打ち出したり、感染者が急増していた北海道の鈴木直道知事が2月28日に「緊急事態」として外出自粛や一斉休校などを求めたりするなどの対策が取られてきた。19日の見解では、それらの対策の効果への評価も示された。 北海道の対策については、種々の要請の後、急激な感染拡大は認められず、新規感染者は直近の数日で0~5人と低いレベルだったと説明。「急速な感染拡大防止という観点から一定の効果あった」と評価した。 全国イベント自粛や一斉休校など政府が要請した対策については、北海道以外の新規感染者数が都市部を中心に漸増しており、クラスターのリンク(感染源)が不明な感染者が増加している地域もあると指摘。「これが続くとオーバーシュートにつながりかねない状況が続いている」とした。 ただ国内全体としては、新規感染者数が若干減少しているといい、「大規模イベントの自粛や学校休校による直接の影響かは分からないが、(種々の活動自粛という)市民の行動変容により、効果があったことを意味している」とした。