「全国イベント全面解除ではない」爆発的な感染拡大へにじんだ危機意識
感染状況に応じて地域ごとに対応分ける
尾身氏は「クラスターが断続的に発生し、大規模化や連鎖が生じ、オーバーシュートが始まっていたとしても、事前にその兆候を察知できず、気付いた時には制御できなくなってしまうのが、この感染症対策の難しさ」だと新型コロナウイルスの特性を口にした。 オーバーシュートが起きてしまうと、イタリアやスペイン、フランスなどのように数週間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止や生活必需品以外の店舗を閉鎖したりする「ロックダウン」というような強制的な措置を採らざるを得ない事態に陥ると警告した。 今後については、社会・経済活動への影響を最小限にしながら、感染拡大防止策を進めるために、地域ごとの感染状況に応じて対応を分けていく必要があるとした。具体的には以下の3つに分類した。
(1)感染が拡大傾向にある地域 地域における独自のアラート(北海道の「非常事態宣言」など)発出やイベントなどの一律自粛の必要について検討する (2)感染が収束に向かっている地域 人の集まるイベントや、感染リスクが高まる「3つの条件(※)」が同時に重なる場を徹底的に回避する対策をした上で、感染リスクの低い活動から徐々に解除することを検討する (3)感染が確認されていない地域 学校におけるさまざまな活動や屋外でのスポーツなどについて、感染リスクの低い活動から実施する (※)…換気の悪い密閉空間、人が密集している、近距離での会話や発声が行われる、という3条件
全国イベント「対策整わない場合は中止を」
この日の会見は、予定より1時間15分遅れて始まった。その直前まで開かれていた専門家会議では、イベントの自粛解除をめぐって、専門家の間でも意見が分かれたという。 全国的な大規模イベント自粛については、それだけを取り出した定量的な効果測定はできないとした上で、「引き続き主催者がリスクを判断して慎重な対応が求められる」とした。尾身氏は、その背景として、4つのポイントを挙げた。 ・集団感染のリスクが想定され、地域の医療体制に大きな影響を及ぼしかねないこと(海外の宗教イベントの例) ・イベント会場だけではなく、その前後に人の密集が生じること(さっぽろ雪まつりの屋外イベントの例) ・全国から人が集まることによる各地の拡散リスクや感染者が生じた場合のクラスター対策の困難性(大阪のライブハウスの例) ・こうしたリスクは屋外か屋内か、また人数の多寡によらないこと 主催者がどうしてもイベントを開催する場合は、上記のポイントに注意することとし、リスク対策が整わない場合は中止・延期を検討してほしいと訴えた。対策が準備されていたとしても、感染の予兆などが判明した場合は即座に延期・中止を判断することも求めた。 こうした提言について、尾身氏は「大規模イベントは全面解除ということではない」と補足した。 「たとえば雪まつりは、一見アウトドアで換気も良く、リスクが高いとは思われないが、それでも3つの条件に合う状況が作り出されてしまった。われわれがいう『大規模』というのは、地方から人が来るし、参加者が特定できないし、そこで集団感染が起こると全国に波及する」 さらに対策が整わない場合は「中止していただきたい。リスクが大きすぎる」と付け加えた。 米国メディアの記者からは「判断を個人に任せている」とただす質問が出たが、北海道大学の西浦博教授は「全てのバーが閉鎖されるアメリカのような状況が長期間、持続可能かというと、おそらくそうではない」と述べ、社会・経済機能を維持した形で、国民に一定の行動制限への協力を求めながら感染拡大対策を取る「日本モデル」を模索していると説明した。