なぜ西武対ロッテ戦で1イニング2併殺の超珍記録が飛び出したのか…原因は西武・今井達也の”ふかふかした髪型”?
2度背負ったビハインドを追いつき、最後は頼れるベテランのひと振りで勝負を決める。西武を勝率5割へ復帰させた連夜の逆転勝利は、長いプロ野球の歴史でわずか6度目となる“珍事”で幕を開けた。 本拠地メットライフドームでロッテを3-2で下した28日の5回戦。前夜で2分けを挟む連敗を6で止めた西武の先発マウンドを託された右腕・今井達也は、先頭の荻野貴司をフルカウントからいきなり歩かせてしまったが、2番・マーティンを145キロのカットボールで注文通りに一塁ゴロに打ち取った。 ファーストの呉念庭からショートの源田壮亮へ、さらに一塁のベースカバーに入った今井へ流れるようにボールが転送され、ダブルプレーが成立すると誰もが思った直後に今井が落球した。しかも、グローブにわずかながら当たってスピードが弱まっていたとはいえ、ボールは今井の左あご付近を直撃した。 記録はマーティンに併殺打が、今井にはエラーがついた。西口文也ピッチングコーチが慌ててマウンドへ向かう。今井自身は「大丈夫です」と続投するも、続く中村奬吾にレフトへタイムリー二塁打を浴びてわずか13球で先制を許す。さらに4番・安田尚憲にも四球を与えた直後だった。 5番・角中勝也を140キロのシンカーでピッチャーゴロに仕留め、今度は1-6-3のダブルプレーを完成させる。2011年7月15日の中日戦で広島が記録してから10年ぶり6度目、パ・リーグに限れば2010年4月4日の西武戦で日本ハムが記録してから11年ぶり3度目となる、1イニングで2度の併殺打が記された。 これが冒頭で記した“珍事”となるが、マーティンの併殺打には素朴な疑問も残る。ベースカバーに走った今井が一塁へ到達する直前でおもむろに帽子を脱ぎ、右手に持ち替えていたからだ。 ベースの位置と送球のコース。両方を同時に見極めながらカバーに入るなかで、今井は自らの帽子が飛ばされるかもしれないと気になったのだろう。そこへ右足でベースを踏むタイミングが微妙にずれ、何の変哲もない送球に対する目測を誤ったのか。落球を問われた辻発彦監督は苦笑いするしなかった。 「だから、ふかふかした頭をしてるから帽子が脱げるんだって。あそこは帽子を気にしている場合じゃないだろうって。あごに当たったから怖かったですよ。ちょっとびっくりしたよね」 ふかふかした頭とは、帽子から大きくはみ出している今井の長髪を指していた。4回に先頭の中村を一塁ゴロに打ち取り、ベースカバーに入った際には今度は帽子が飛び、拾い上げた呉に手渡されている。今井に期待をかけているからこそ思わず小言を言った指揮官は、こうつけ加えながら目を細めている。 「顔に当たってちょっと目が覚めたかな。よく投げたと思うよ」